小泉純一郎が意味深発言「将来、いつ自分の働きの場所ができるかわからない」

先週、猪瀬直樹前東京都知事が所長を務めるシンクタンク「日本文明研究所」主催のシンポジウムで講演する小泉純一郎元首相。「小泉節」は今も健在だ 撮影/遠藤修哉(本誌)

「そうか。じゃあ、やってくれ!」

 巨額の負債を抱えながら、コスト意識ゼロの放漫経営。政・官・業が癒着し、官僚の天下り先となっていた道路公団の改革は、2001年、小泉純一郎首相のひと声で始まった。命を受けたのは、後に東京都知事となる猪瀬直樹氏だった――。

 2月8日、猪瀬氏が所長を務めるシンクタンク「日本文明研究所」で、第3回目のシンポジウム「日本の歩むべき道」が開催されたが、そのゲストスピーカーとして登壇したのが、「聖域なき構造改革」を推し進めた小泉元首相だった。「改革派」と呼ばれた盟友2人のツーショットは実に久しぶりに映ったが、この日は、当時の裏話を披露する一幕も見られた。

 自著『日本国の研究』(文春文庫)のなかで、カネの流れが不透明な財政投融資計画や、税金を食い散らかす特殊法人の「暗部」を徹底的に暴き、作家として注目されていた猪瀬氏が、一旦、取材対象を永田町や霞ヶ関から離し、太宰治をテーマに評伝『ピカレスク』の執筆に注力していた頃のことだ。

 2001年4月、第一次小泉内閣が誕生。かねてより、「郵政民営化」を言い続けてきた「政治家・小泉純一郎」を取材していた猪瀬氏は、小泉政権の挙げた政策メニューを精読したという。

「道路公団改革が入っていないじゃないか……」

 いてもたってもいられず、すぐさま小泉首相と面会の約束を取りつけ、「直談判」する。もちろん、そんなことをやっても覆らないのはわかっていた。ただ、この日本国民を食い物にする国家の「暗部」にメスを入れなければ、問題の根を断ち切れないと思っていたため、どうしても作家としてひと言いいたかったのだ。

 すると、小泉氏の英断がすかさず下る。

「そうか、わかった。じゃあ、やってくれ!」

 こうして、不可能といわれた道路公団改革が動き出すことになったのだ--。

「日本は、原発ゼロでもやっていける!」

 ときに語気を強め、ときに笑いを交えたこの日の講演は1時間を超えた。齢74歳にして、“小泉節”は健在だった。

 盛り上がったスピーチの最後、唐突とも感じられる話を始める。

「政治家のなかに1人だけ記録を破れない人がいる。尾崎幸雄、“憲政の神様”といわれた政治家です」

 1890年、第1回衆議院議員選挙で初当選。以来、明治、大正、昭和と時代を経て、当選回数は実に日本最多の25回。大選挙区、中選挙区、小選挙区と、すべての選挙制度を勝ち抜き、在職期間も最長の63年。94歳で逝去した“議会政治の父”である。

「国会の裏に尾崎記念館がある。今は、名を変えて憲政記念館。入口にある石碑には、こう揮毫されている。人生の本舞台は常に将来にあり――。亡くなる年に94歳で、こう揮毫したのです。将来、いつ自分の働きの場所ができるかわからない。そのために、努力が必要だ。そういう気力を失っちゃいけない」

 政界を引退したとはいえ、小泉元首相の言葉は意味深長だ。『文藝春秋』1月号のロングインタビューでは、今夏の参院選を控え、勢力の結集を図る野党にこう語っている。

「これからできる新党も全部壊れるでしょう。駄目だよ、野党だけでいくらやったって。自民党議員が出て新党を作らないと伸びないよ」

 そして、安倍政権にもこう苦言を呈している。

「全部強引に押し切っちゃう。なんか先急いでいるね。ブレないところが俺を見習っていると言われるけど、わからんな」「自民党は総理に何を言おうが自由だったんだよ。言いたい放題言った。ただ、決まれば従う。今は決まる前から総理のご意向に黙っちゃうから、おかしいよね」

 今回のシンポジウムで発言も、「憲政の常道」から外れた安倍政権への批判にも聞こえてくるから不思議だが、命ある限り「政治家・小泉純一郎」は真っ直ぐに言いたいことを言い続けるのだろう、という印象を強く受けた。

 道路公団を内側からぶっ壊した猪瀬氏もまた、東京都知事の職を辞してからは作家活動に専念していたが、昨年末には、おおさか維新の会の要請を受け、大阪府・市の特別顧問に就任したばかり。

 かつての「改革の盟友」が再びタッグを組んで何か仕掛けてくるのではないか……? 参院選を控えているからこそ、そんな穿ったアングルで見てしまう。 <取材・文/斉藤武宏 撮影/遠藤修哉(本誌)>

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