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「おちんちんの大きさとか気にしなくていいんですよ」――爪切男のタクシー×ハンター【第七話】

 終電がとうにない深夜の街で、サラリーマン・爪切男は日々タクシーをハントしていた。渋谷から自宅までの乗車時間はおよそ30分――さまざまなタクシー運転手との出会いと別れを繰り返し、密室での刹那のやりとりから学んだことを綴っていきます。 【第七話】「おちんちんの大きさとか気にしなくていいんですよ」  社長のひょんな思い付きからスタートしたエロ動画紹介サイトの運営だが、その現状は過酷を極めていた。日中は我が社のメイン業務であるメルマガの編集作業、日が落ちた夜からは、セコセコとエロ動画サイトの仕事に取り掛かる。深夜三時頃に全ての仕事を終え、近所のスーパー銭湯でひとっ風呂浴びてから帰宅するというハードな毎日。エロ動画のダイジェストは時間にして三分程度で、それを一日五本程編集し、各動画の紹介文をおよそ二百文字で書く。ただそれだけの作業ではあるが、抑え過ぎず出し過ぎずという絶妙のバランスでエロ動画の見どころをまとめる作業は、繊細さと高い編集センスを要求される難しい仕事であった。おそらく、私が人生で一番真剣にエロ動画を観ていた時期ではないだろうか。  来る日も来る日もエロ動画ばかり見ていると、セックスとは何なのか? 男性器とは何なのか? 女性器とは何なのか? 男と女とは何なのか? といった少し哲学的な疑問が私の頭をもたげるようになっていた。  男なら誰もが一度は考えるであろう「もっと大きければな……」という切なる気持ち。短小仮性包茎の私も、中学生ぐらいからそのことでよく悩んでいたものだ。青春である。そんな私に転機が訪れたのは大学生の時に友達から聞いた「なぜ外国人は男性器の平均サイズが大きいのか?」という話。友達の話を簡単にまとめるとこうだ。「外人は寝る時にパンツをはかないで寝る人が多いらしい。なので寝ている間は、ずっと亀頭の先が布団に触れることで刺激される。その刺激で男性器が大きくなる」という話だ。私は思った。「この話は理に適っている」と。  早速、その日の夜から私は全裸で寝ることにした。皮被りである私は、まず亀頭が寝ている間も露わになっている状態を作らねばならない。色々と策を講じてはみたものの、最終的には原始的な方法に落ち着き、剥けた状態で皮を糸で縛ることにした。縫い糸のような鋭利な糸だと皮に食い込んで痛いので、やわらか材質の毛糸で縛った。少し茶目っ気も忘れず縛り方はちょうちょ結びにする。期待に胸膨らませながら就寝したのだが、寝ている間に毛糸がほどけてしまって失敗であった。他に何か固定できる物はないかということで、ビニールテープや輪ゴムも試してみた。皮がきっちりと留まるには留まるのだが、男性器周りの血の流れまで止めてしまい、亀頭がどどめ色に変色してしまった。それならばと、園芸用の柔らかい針金で皮を固定してみる。支柱に巻きつきながら天高く育つアサガオのように、自分の男性器にらせん状に針金を巻きつける。出来上がった姿は、大仁田厚がデスマッチプロレスで使っていた有刺鉄線バットのようであった。あれほど大仁田厚のプロレスを否定していた私の男性器が大仁田の象徴でもある有刺鉄線バットになるとは皮肉なものだ。
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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