石原慎太郎を“操る”ヘリテージ財団の知られざる闇
10月末、突如都知事の職を辞し、国政に打って出ると宣言した石原慎太郎氏。大阪維新の会などと「保守の大同団結」を目指し、意欲的に活動を開始している。尖閣問題や竹島問題など、重要な懸案事項となっている領土問題にも毅然とした態度で中韓に「物申す」と宣言しており、保守層や右派からの期待は大きい。
しかし、そもそも尖閣問題に火をつけたのは石原氏そのものだ。東京都による尖閣諸島買い上げ宣言には不自然な点があると言うのは、 元フォーブスアジア太平洋支局長でノンフィクション作家のベンジャミン・フルフォード氏だ。
「今年の4月17日、石原氏が最初に東京都による尖閣買い上げをブチ上げたのは、なぜかアメリカにおいてでした。しかもヘリテージ財団でのシンポジウムです。こうした情報は新聞にも載りましたが、誰もこの点に注目しようとしない。この財団の正体を日本人は知るべきです」
ヘリテージ財団は’73年、保守派の情報ブローカーであったエドウィン・フュルナーが保守派仲間のP.ウェイリッチとともに、政策決定に積極的に影響を及ぼすことを目標として設立した。法的には米内国歳入法規定の「慈善等の活動を行う団体」となっているが、実態はネオコン系シンクタンクである。
「設立初期から多くの政策が採用されており、今やアメリカ政治に欠かせない存在です。79年、イギリス出身の研究者・バトラーが発案した『エンタープライズゾーン』法案はクリントン政権にも踏襲されました。多忙な中でも手軽に読めるよう政策案を短くまとめた『ブリーフケーステスト』を政治家に送りつけるなど、政策の売り込み方においても新たな手法を確立しました。出資者にはR.M.スカイフェやアムウェイ創業者など大物実業家、他の右派財団が名を連ねている」
スポンサーに軍需産業が多く名を連ね、ミサイル配備をはじめとする軍備増強を強硬に主張することからも、別名「ミサイル財団」とも呼ばれている。イラク戦争やAFRICOM(アメリカアフリカ軍)創設にも関与した。アジアで領土問題や歴史問題による緊張状態を煽る政策を推進し、中国や北朝鮮にミサイルを買うよう圧力をかけているのも、同財団であるとフルフォード氏は言う。
「ヘリテージ財団は、自民党系タカ派や防衛族の議員とも関係が深い。同財団の講演会では07年、当時の久間章生防衛相が武器輸出3原則の見直しを発言している。今回の石原氏の尖閣に関する発言を契機に、その後、日中が棚上げしていた尖閣問題が再燃し、同時期に北朝鮮のミサイル発射問題も浮上して日本はミサイル防衛関連の新型兵器をアメリカから追加購入することになった。偶然とは思えない流れです」
同財団の背後には数々の米軍産複合体がスポンサーについている(相関図参照)。
※【相関図】⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=327127
「ラテン語で『Cui Bono(クイボーノ)』という言葉があります。事件や事故、戦争の裏で『誰が得をしたか』という意味です」
フルフォード氏がこのたび、上梓した『図解 世界を牛耳る巨大企業』(扶桑社刊)では、そんな数々の戦争や事件の背後に蠢いた多国籍企業やシンクタンク、研究所を余すところなく紹介している。
「日本がこれから進むべき道を誤らないためにも、ぜひとも本書をと手にとってほしい」 <取材・文/日刊SPA!取材班>

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