更新日:2015年09月01日 21:17
ニュース

「不要ダム建設」が安倍政権のもとで続々復活中

計画から40~50年たつのにまだ完成していない“亡霊”のようなダム建設計画。眠っていたそれらの計画が「アベノミクス」の名のもとに復活、急激に推し進められている!! ◆建設停止のムダなダムが「アベノミクス」のもとで復活する!!
石木ダム

石木ダム(長崎県川棚町)

 長崎県川棚町川原地区。小川沿いに住宅がポツポツと並ぶ風光明媚な土地には、約半世紀にわたって「石木ダム」建設計画がくすぶる。11月下旬、“強制収用”告知の看板が、まだ人の住む4世帯の人家の前に人知れず設置された。現地住民は長年にわたる抵抗で、本体工事を押しとどめてきた。だが安倍政権発足後、事業者である県や受益者である佐世保市の強硬姿勢が目立つようになった。佐世保市で石木ダム建設反対の住民運動に関わる松本美智恵さんは、同市長宛ての公文書のコピーを示しながらこう説明する。 「佐世保市は九州防衛局に依頼して、石木ダムが米海軍や海上自衛隊の水供給に『大きく寄与するものと認識しその推進について望んでいる』という文書を出してもらっているんです」  ところが、その理由すらも怪しい。「軍艦には淡水化装置がありますし、’94年の大渇水のときも米軍は自前で基地の水を確保しています」(松本さん)  石木ダムの建設目的は利水と治水だ。佐世保市は慢性的な水不足を訴えているが、水道供給実績は右肩下がり(グラフ参照)。洪水対策にしても、ダム建設予定地は川棚川水系の1割ほどの流量しかなく、大した効果は見込めない。 ⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=769254 佐世保地区の一日最大取水量・市予測と実績の乖離 それにもかかわらず、県の姿勢はますます強硬になる一方。県は地権者など23人を「工事を妨害した」として裁判に訴えた。いわゆる“スラップ(恫喝)訴訟”だ。  安倍首相のお膝元、山口県岩国市でもダム建設が急加速している。10月17日、平瀬ダム工事の安全祈願祭が行われ、本体工事が始まった。近年、このダム建設に予算はついても動きはほとんどなかった。現地のアウトドアガイド・吉村健次さんは、「ダムの治水効果が見込めない」からだという。
平瀬ダム

平瀬ダム(山口県岩国市)

「大雨が降ればダムは満水になって放水しますから、洪水回避の効果はありません。一方、錦川水系の森林の保水力は平瀬ダムの23倍といわれています。放置された針葉樹林を手入れすれば十分です。長らくダム建設は先延ばしになっていたのですが、安倍政権になって急展開しました。当初計画では350億円だった予算が現在では740億円になり、ダム建設が加速。この錦川は“西日本一の清流”と呼ばれるほど水の澄んだ川。下流の錦帯橋も岩国市の大きな観光資源です。水が汚されると、その価値は激減するでしょう」 ⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/769248 ●石木ダム(長崎県川棚町) 計画/’62年 事業費/285億円 長崎県川棚町石木ダム建設予定地。まだ人が住む家と土地を強制収用します、という「お知らせ」の看板が突如現れた。「私たちを分断しようとしているんでしょう」(地元住民) ●平瀬ダム(山口県岩国市) 計画/’68年 事業費/740億円 本体工事が着工された平瀬ダム(山口県)。「1級河川清流日本一になった尻別川(北海道)よりきれい」といわれる錦川のファンは全国に数多く、ダムができれば観光業にも大ダメージ必至だ 取材・文・撮影/足立力也 図/futomoji
おすすめ記事