現代ヤクザの置かれた厳しい生活。それでもなぜ、極道を続けるのか?
暴力団対策法、暴力団排除条例が全国にあまねく敷かれ、ヤクザは減少の一途。しかしその「“法”囲網」は彼らの日常生活にも侵食し、生きる権利を脅かすほど過剰だとも。当事者のヤクザの声に耳を傾けてみた
●二宮順次氏(仮名)…49歳。広域暴力団2次団体組員。長年、任侠ヤクザとして鳴らしてきた
「大御所たちの逮捕が相次いでいる。ゴルフは俺を含め、周りもほとんどやめた。指定団体の構成員のリストが共有されているため、アメリカや同盟国への旅行にも行けない。銀行にしても、3年前の暴対法改正以前から持っていた口座はなんとか確保しているが、新規開設はダメ。口座を開いても後に銀行から指摘され、パクられた組員も大勢いるよ」
現代ヤクザの置かれた厳しい生活を語るのは長年、極道を邁進してきた2次団体の組員・二宮順次氏(仮名)。ヤクザへの締めつけが加速するなか、最近、長年連れ添った妻の籍を抜いて、高校生の息子と小学生の娘2人を育てているという。
「家計を助けるため、妻がパートに出ることになった。給与の振込先として必要な銀行口座を作る際、“反社会勢力との関係”を問われたと妻から聞き、今置かれている状況は、もはや自分だけの問題ではないと悟った」
もちろん子供たちには離婚を知らせず、今も変わらず家族の生活は続いている。離婚すれば、母子手当などが法制上で受けられるメリットもある。しかし、そうした手当は手にしていないというのだ。
「普通なら母子手当をもらうのが賢明なんだろうけど、俺らはお上が不介入のトラブル処理などを生業にしてたから、都合のいいときだけ人権を振りかざし、お上にすがるのは極道に反するとも思うんだよね」
しかし、極道といえども基本的人権はある。憲法第25条で定めるところの「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有」し、「衣食住」は保障されてもいいはずだ。
しかし現状は、ヤクザでいる限り「住」の保障は厳しくなってきており、もはや家を借りることも買うことも不可能だと氏は言う。
「知り合いは『嫁の名義で家を借りれば』と言うけど、それは詐欺に当たってしまう。もちろんそうしてまで家を借りている組員も多数いる。学校や近所に知られないよう、それっぽい服装もしないよう十分気をつけてね」
二宮氏はヤクザが完全に法に触れない形で生きていくことはもはや不可能になったと嘆く。
「年金や税金などを払わないわけでもなく、よそさまに迷惑かけるわけでもないのに、なにかしらの法に触れてしまうのが今の俺たち。でも、国家がここまで極道に厳しくしなきゃいけない状況にあるのも理解できる。この業界は悪い人が9割だからね(笑)。しかも、今のご時世、俺たちが必要とされる場面は皆無に等しいでしょ……」
二宮氏はヤクザに「未来がない」ことを実感しているという。それでもなぜ、極道を続けるのか。
「もう理屈や損得勘定じゃない。俺らは自分が惚れた人についているだけ。例えるなら宗教団体の信者。信者だけど、代紋ではなく親分や兄貴を信仰している。ある意味、病気なんですよ(笑)」
― ヤクザの主張「俺たちに人権はないのか」 ―
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