更新日:2022年10月05日 23:54
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インドで出会った愉快な詐欺師たち――雑すぎ、目的が見えない、そもそも騙す気がない!?

「もういらないって言ったらいらないんだ。何度言えば分かるんだ。そんな巨大な絨毯を長期旅行者の私が買って、一体どうするというんだ!」  インドの客引きがしつこいというのは、ガイドブックなどを見れば誰でも知ることができる情報だ。しかし、その恐ろしいほどの鬱陶しさというのは訪れた人にしか分からないもので、想像をはるかに越えてくる。 「ヘイ、フレンド。この絨毯の価値はお金じゃ買えないんだぜ。4000ルピーでどうだ? ところでお前の家にソファはあるか?」  とにかく売りつけることだけが重要で、こちらの都合など知ったことではないのだ。仮に買ったとしても、「ところで」と次の商品が出てくる。買わなければどこまでも付いてくる。なんとか振り切ったとしても、10メートル先には「ヘイ、フレンド!」と手を振る別のインド人が待っている……。こんな感じで声をかけてくるインド人にロクなやつはいないのだが、ほんのわずかな確率で味わい深い人間と出会えることも事実。打率でいうと、0割3分くらいのヘボバッターだが、これがあるからインドの街歩きはやめられない。  今回は、東南アジアを1年以上バックパッカーとして旅していた筆者が、インドで出会った愉快な詐欺師たちを紹介したい。 インドの詐欺

魔法のオイルの実演販売

 インド南部にある大都市チェンナイ。駅前を歩いていると、野次馬に囲まれたインド人商人が「OIL」や「PAIN」がどうのこうのと熱弁していた。 「お前、インド人じゃないな! こっちへ来い!」  ギャラリーに1人は外国人が必要だということで、半ば強制的に輪に加わることに。どうやら“塗るだけで全身の痛みがキレイサッパリなくなる”という魔法のオイルを売っているようだ。
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オイルの効能

 日本の常識で考えれば、「薬事法は大丈夫?」と心配になってしまうが、ここはインド。店頭に並べられたアロエや薬草を火であぶり、さらにグツグツ煮詰めてオイルを抽出。そのオイルを糸に垂らしてみたり、変形しきったアロエにかけてみたりと、なにかやっている感は満載である。
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魔法のオイルを製作中

 オイルは緑・赤・黄と全部で3つあり、順番に塗ることで効果が発揮されるらしい。実演販売ということで、筆者も腰にオイルを塗ってもらったのだが……。赤のオイルを塗られた瞬間、皮膚が信じられないほど焼けるように熱い! 悶える筆者を見て、「いま、効いているところだ」とギャラリーに向かって自慢気に解説する商人。黄色のオイルはまだ塗ってないけどもう効いているのか? その赤のオイルを何故か顔面に塗られた不運なインド人は、「なんてことしやがる!」と吐き捨て、頭を抱えながら小走りでその場を去っていった。

「君に似合うTシャツを知っている」

 カルカッタにある広場でクリケットにいそしむインド人たちを眺めていると、同じく観戦中のインド人が「なにか欲しいものはある?」となんの前触れもなく声をかけてきた。彼の名前はアミット。 インドの詐欺 ちょうどTシャツを買おうと思っていたところだったのでそう伝えると、「君に似合うTシャツを知っている」と目を輝かせて「ついてこい!」と声を張り上げながら走り出した。到着したのはオールドマーケットの中にある布地屋だった。 「マスターが来るまで時間があるから、それまで街を案内してやる」  アミットは肉市場、魚市場、野菜市場をぐるりと一周したあと、1杯のチャイと1本のタバコまでごちそうしてくれた。途中、豊富な品揃えでTシャツを売っている露店があった。筆者が商品を手に取ろうとした瞬間、「こんな汚いもの買うもんじゃない!」と怒り出すアミット。まだ何も言っていないのに……。
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アミットが市場を案内してくれた

 店に戻ってからさらに待つこと20分、ようやくマスターが到着した。日本語が堪能なマスターの第一声はこうだった。 「うちは布地屋なのでTシャツなんか置いていないですよ」  アミットはバツの悪そうな顔をしながらチップを要求することもなく去っていった。アミットは一体何がしたかったのだろうか。
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マスターの帰りを待つアミット

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「オレはカルカッタで1番のワル」
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元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion

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