インドで出会った愉快な詐欺師たち――雑すぎ、目的が見えない、そもそも騙す気がない!?
「もういらないって言ったらいらないんだ。何度言えば分かるんだ。そんな巨大な絨毯を長期旅行者の私が買って、一体どうするというんだ!」
インドの客引きがしつこいというのは、ガイドブックなどを見れば誰でも知ることができる情報だ。しかし、その恐ろしいほどの鬱陶しさというのは訪れた人にしか分からないもので、想像をはるかに越えてくる。
「ヘイ、フレンド。この絨毯の価値はお金じゃ買えないんだぜ。4000ルピーでどうだ? ところでお前の家にソファはあるか?」
とにかく売りつけることだけが重要で、こちらの都合など知ったことではないのだ。仮に買ったとしても、「ところで」と次の商品が出てくる。買わなければどこまでも付いてくる。なんとか振り切ったとしても、10メートル先には「ヘイ、フレンド!」と手を振る別のインド人が待っている……。こんな感じで声をかけてくるインド人にロクなやつはいないのだが、ほんのわずかな確率で味わい深い人間と出会えることも事実。打率でいうと、0割3分くらいのヘボバッターだが、これがあるからインドの街歩きはやめられない。
今回は、東南アジアを1年以上バックパッカーとして旅していた筆者が、インドで出会った愉快な詐欺師たちを紹介したい。

インド南部にある大都市チェンナイ。駅前を歩いていると、野次馬に囲まれたインド人商人が「OIL」や「PAIN」がどうのこうのと熱弁していた。
「お前、インド人じゃないな! こっちへ来い!」
ギャラリーに1人は外国人が必要だということで、半ば強制的に輪に加わることに。どうやら“塗るだけで全身の痛みがキレイサッパリなくなる”という魔法のオイルを売っているようだ。
日本の常識で考えれば、「薬事法は大丈夫?」と心配になってしまうが、ここはインド。店頭に並べられたアロエや薬草を火であぶり、さらにグツグツ煮詰めてオイルを抽出。そのオイルを糸に垂らしてみたり、変形しきったアロエにかけてみたりと、なにかやっている感は満載である。
オイルは緑・赤・黄と全部で3つあり、順番に塗ることで効果が発揮されるらしい。実演販売ということで、筆者も腰にオイルを塗ってもらったのだが……。赤のオイルを塗られた瞬間、皮膚が信じられないほど焼けるように熱い! 悶える筆者を見て、「いま、効いているところだ」とギャラリーに向かって自慢気に解説する商人。黄色のオイルはまだ塗ってないけどもう効いているのか? その赤のオイルを何故か顔面に塗られた不運なインド人は、「なんてことしやがる!」と吐き捨て、頭を抱えながら小走りでその場を去っていった。
カルカッタにある広場でクリケットにいそしむインド人たちを眺めていると、同じく観戦中のインド人が「なにか欲しいものはある?」となんの前触れもなく声をかけてきた。彼の名前はアミット。

ちょうどTシャツを買おうと思っていたところだったのでそう伝えると、「君に似合うTシャツを知っている」と目を輝かせて「ついてこい!」と声を張り上げながら走り出した。到着したのはオールドマーケットの中にある布地屋だった。
「マスターが来るまで時間があるから、それまで街を案内してやる」
アミットは肉市場、魚市場、野菜市場をぐるりと一周したあと、1杯のチャイと1本のタバコまでごちそうしてくれた。途中、豊富な品揃えでTシャツを売っている露店があった。筆者が商品を手に取ろうとした瞬間、「こんな汚いもの買うもんじゃない!」と怒り出すアミット。まだ何も言っていないのに……。
店に戻ってからさらに待つこと20分、ようやくマスターが到着した。日本語が堪能なマスターの第一声はこうだった。
「うちは布地屋なのでTシャツなんか置いていないですよ」
アミットはバツの悪そうな顔をしながらチップを要求することもなく去っていった。アミットは一体何がしたかったのだろうか。

魔法のオイルの実演販売
「君に似合うTシャツを知っている」

1
2
1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。
2018年、西成のドヤ街で生活した日々を綴った『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)でデビュー。ライターとして取材地に赴き、その地に長らく身を置く取材スタイルを好む。著書に『ルポ歌舞伎町』、『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ワイルドサイド漂流記』(文藝春秋)がある。X:@onkunion
記事一覧へ
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】
「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院して“ガチのデトックス”を体験した日本人女性を直撃
生き方に悩んだ女子高生が、インドで“靴を見張ってお金を稼ぐ少年”に学んだ商売の本質
一部インド人観光客の“素行の悪さ”が各国で問題視されているワケ。タイでは「インド人お断り」の張り紙、国際線CAもマナーに嘆き
なぜインドは「誰とも組まない」?ロシアとの武器取引から見える“世界第4位の軍事大国”の戦略
インド人が大切にする「水のような柔軟性」で売上2億円強。インド人CEOの仕事の流儀とは
「韓国に行ったはずの息子がカンボジアで行方不明に…」特殊詐欺に巻き込まれ“消える日本人”と残された家族の絶望
「なぜ自分が…」1000人拘束のカンボジア詐欺拠点に日本人歯科医の名。知らぬ間に国際犯罪に巻き込まれる恐怖
日本人を騙したカネが日本の不動産に化ける…カンボジア特殊詐欺幹部が狙う“逃亡先”
自衛官から地雷処理の活動家に転身。愛媛県とカンボジアとの懸け橋に
クラウドファンディングでトラブルが起きても炎上させないコツ
庶民はタワマンを買ってはいけない!管理費をめぐる住人格差は深刻
ブラジルのスラムに10年住んだ日本男性の生き様。会社を辞めて写真家になった理由
丸山ゴンザレスが見た「ニューヨークと歌舞伎町の共通点」とは
プノンペンで寸借詐欺をして生き延びた男の末路~日本を棄てた日本人~
経済成長が進むベトナム…それでも娼婦やマリファナが行き交う「ブイビエン通り」の夜
「生活費は月3万バーツ(約14万5000円)」タイに移住した41歳女性が語る現地生活のリアル
タイ出張を機に“転落”した優秀な社員。リモートワークの裏で始めた“副業”で逮捕されるまで
バンコクタワマン投資は今が買い時?「利回り6%保証」の甘い話に潜む罠と成功のための出口戦略
11歳下のタイ人女性と国際結婚した日本人男性が、現地で居酒屋を経営するまで「外までお客さんを見送りに出ると、彼女がいて…」
「夫が刑務所行きに」タイ人男性と結婚した日本人女性を襲った“過酷な現実”
ウォッカと謎の錠剤を「コレあげる~♡」。昏睡強盗パブに記者が潜入、潰れた白人客が連れ去られた先は…
日本初のタワマンに住む70代は「一生モノの買い物と思ったのに…」。各地で“老朽化”が進むタワマンに住民が悲鳴
外国人観光客が日本で“ぼったくり”被害に。SNSで「避けるべき観光地」と悪名高いのは
「長期的に少しずつぼったくる」オタクに優しくなくなった秋葉原の今。コンカフェで“年収2000万円”稼ぐキャストも
「金のネックレスを売っているお店に連れていき…」歌舞伎町で増加する“新たなぼったくりの手口”
この記者は、他にもこんな記事を書いています
























