香山リカ、沖縄基地反対運動リーダーらの初公判を傍聴する
そんな中での初公判に、注目が集まらないわけはない。
なので、記者席や家族用の特別傍聴席を除いて用意された一般傍聴の22席に、379名もの人が並んだのだ。
当日の開廷は10時だが、傍聴希望者は午前8時半に抽選の整理券を配るので地裁隣の公園に集合、という情報が回ってきた。前日遅く那覇入りした私は、眠い目をこすりながら宿泊先のホテルからタクシーで公園を目指したのだが、裁判所のそばに来ると眠気も吹き飛んだ。そのあたりの警備が尋常ではないほど厳重だったからだ。
那覇では拘置所、地裁、高裁、それから合同庁舎などがひとつの敷地の中にあるのだが、どこのゲートもしっかり閉じられて職員や警官が一列に並んでふさいでいる。まだ8時を回ったばかりなのに、敷地の中にも大勢の人が文字通りひしめいていて、機動隊員までがいる。私はつい「シン・ゴジラみたい……」と思ってしまったが、まさにこれから怪獣が来襲する、といった雰囲気だった。
指定された公園のまわりも警官が取り囲んでいたが、公園に一歩入ると拍子抜けするほどおだやかな雰囲気だった。すでに100人ほどの人が集まっていたが、「あーら、お久しぶり」「おはよう。いつ来たの」などと顔見知りどうしがあいさつを交わして、あとは静かに抽選整理券をもらう列に並んでいる。さすがにピクニックのように浮かれている感じではないが、「ゴジラ来襲」とはかけ離れていた。
8時半になると裁判所職員が、数字が印字された黄色い紙のリストバンドをひとりひとりにつけてくれる。その時点でおよそ200人がいたが、みな協力的に並び腕を差し出し、バンドつけはあっという間に終わった。
そのあと、公園内でそれぞれが顔見知りとおしゃべりをしたり持参のお茶を飲んだりしてまたまったりとすごしているうちに、9時20分の結果発表タイムが来た。
昔の合格発表のように当選番号が印刷された紙が貼り出されるが、よく見えない。職員が「番号の読み上げを行います」と口にした最初の数字が、私のリストバンドの番号に聴こえた。
当選するなどと予想もしていなかったので、逆に驚きもなく冷静だった。一応、前に進んで貼られた紙を確かめると、やはり「1612」という数字が書かれている(※写真2)。「……私、当たってるわ」とその時点ではじめて口にしてみたが、まわりの人たちも「おめでとう」と言うわけにもいかず、「ホントだ」「すごいや」などと小さな声でつぶやいていた。
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それから、当選したり傍聴の必要があり誰かにゆずってもらったりした人たちは一列に並び、裁判所の職員や警官にまわりを囲まれるようにして隣の裁判所に移動した。公園内にいる人や裁判所前に集まっている人たちから「よろしく頼むよ」「がんばれ」などと声をかけられ、緊張が高まってきた。
裁判所内に入り、法廷のある2階に上がって手荷物をあずけ、持ち込むポーチなどは目視で検査、さらに金属探知機を通して検査、と厳重にチェックを受ける。傍聴者自身はさらにボディータッチでの検査もある。車いす席で傍聴する88歳の島袋文子さんは車いすが金属探知機に反応し、「ほかに金属は持っていないか」などとかなり執拗に質問されていた。車いすで入廷する高齢者が法廷内で突然、刃物を振り回す、などといった事態があるとは考えにくいのだが、これも仕事、ということだろうか。
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