香山リカ、沖縄基地反対運動リーダーらの初公判を傍聴する
法廷内の傍聴席は48。それが記者席、特別傍聴席、一般傍聴席、2つの車いす傍聴席に分けられている。私は真ん中の後ろの方に東京から来たジャーナリストの安田浩一さんと並んで座った。
10時直前に、山城さん、稲葉さん、添田さんの3人が入廷してきた。
傍聴席から拍手がわき起こり、裁判官が「拍手はやめてください」と制する。
保釈中の稲葉さん以外のふたりは手錠、腰ひもがつけられ、席につくときにはずされた。3人とも長期の勾留で顔が白い。私が知っている添田さんと比べてずいぶんやせた印象だ。
3人を担当する弁護士は計9人、検察側は男女ふたりだ。
まず裁判官が3人の名前や生年月日を確認し、それから稲葉さんは保釈中だからなのか弁護士席に移動、山城さん、添田さんだけが両脇を警官にはさまれて被告席に着席した。
その後、検察による起訴状の読み上げが始まる。
「いよいよか」と私は息を呑んだが、起訴状の内容にちょっと肩透かしを食らった気がした。
「被告らはコンクリートブロック200個を用意してトラックに積んで運び」とか「有刺鉄線2本、2000円相当を切断し」とか、こんな言い方は不謹慎かもしれないが、「ショボい……」と感じてしまった。防衛局員への傷害は人的被害が出ていることなどで軽々しくは語れないが、「外傷性頸部症候群で全治2週間」ということは、切り傷などもなくレントゲンには何も映らず神経症状などの後遺症も起きなかったから、まあこういう診断名にならざるをえないってことかな、とつい思ってしまった。
もちろん「ブロック積みも立派な犯罪だ! あなたの家の前に積まれてもいいのか」といった意見があるのもわかるが、冒頭にも述べたように、沖縄は選挙という民意で「辺野古ノー」の意思を示した。翁長知事も県知事として埋め立ての承認を取り消す指示を出している。それにもかかわらず、国の意向で工事は一方的に始まってしまったのだ。そこで行われる“最後の抵抗”としての座り込みやブロック積みを、「あなたの家の前に……」という例と安易に比べることはできないのではないだろうか。
というより、ひとつひとつの行為が「なんだ、たいしたことないじゃない」と言いたいわけではなくて、裁判所を取り巻くあまりの緊迫感や動員されている警察官の人数のものすごさと、そこで読み上げられる事件の内容とに、めまいがするようなギャップを感じた、ということだ。
次いで、山城さん、稲葉さん、添田さんの順で罪状認否が行われた。
まず山城さん。用意してきたものを読み上げます、と便箋を取り出し、「これまで異様な隔離が行われてきた」「証拠とされるビデオも見せてもらえてない。その状況で罪状認否が行えるのかと強い憤りを表明したい」「今後も沖縄の闘いは不屈であり不滅」「これはまごうことなき弾圧だ」と強い口調で今回の逮捕、勾留への怒りを述べた。その上で起訴状で述べられたそれぞれの容疑について、「防衛局の不当な行いを止めたまでだ」「暴徒化していたのは警察のほうだ」「ブロックを積んだのはやむにやまれずに行った正当な表現行為」などと述べた。
その後、山城さんの担当弁護士は、「器物損壊(有刺鉄線の切断)については争わない」とし、ほかのふたつの事件については「暴行を行っていない」「威力業務妨害に当たらない」などとして「無罪」を主張した。
次いで稲葉さん。取り調べで「新基地に反対するなら何をしてもいいのですか」と問われたが、自分こそ「新基地を作るためなら何をしてもいいのですか」と問いたい、として、3年前に沖縄に来てから名護市長戦、知事選、衆院選とすべて基地建設反対派が勝利し、まさにオール沖縄で沖縄の民意がこれほどはっきり示されているのに、1昨年あたりから辺野古での海上保安庁や機動隊が突然、強硬な態度に出てくるようになった、と自らの経験を述べた。そして、これが東京や和歌山なら「とんでもないこと」となるはずなのに、「なぜ沖縄なら許されるのか」として、「罪は政府にこそある」と語った。
稲葉さんの担当弁護士は、「ブロック積みの事実は争わないが、それは威力業務妨害に相当しない」などやはり無罪を主張。
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