「いい人なんてどこにいるんだよ?」と毒づいたホーク――フミ斎藤のプロレス読本#024【ロード・ウォリアーズ編9】
佐々木健介との新しいタッグチーム、ヘルレイザースとして日本のリングで再スタートを切り、仕事の面でも以前よりもハッピーになった。これでちゃんとしたガールフレンドなりフィアンセなりがいたら、もういうことなしなのだ。
しかし、ちゃんとした人との出逢いほどむずかしいことはない。よおく考えてみると、同性の飲み仲間や仕事仲間だってちゃんとした人とそうでない人がいる。グロウン・アップ(オトナ)になると、フレンドと呼べる相手がだんだん少なくなってくる。
べつに性格が悪いから友だちができないのではない。いっしょに遊びに出かけるくらいの知り合いならいくらだっている。だからといって、遊んでくれるバディがトゥルー・フレンズとは限らない。それなりの年齢になると、大人数で群れている時間がない。
ホークはいいヤツだから、同業者ではない友だち、プロレスのスターのホーク・ウォリアーではなくてフツーのアメリカ人のマイクとして接してくれる友だちが何人かいる。
でも、友だちと友だちでありつづけるためには、ちょういいあんばいの距離も必要だ。気持ちのいいディスタンスを無意識につくれたら、それがいちばんいい。
男の子――ほんとうは女の子だってそうなのかもしれないけれど――はみんな寂しがり屋で、いつも独りぼっちだったり、そこにはいないだれかを求めたりしている。
ホークがファッキン・ビッチとかかわって悩まされたり、イライラ、もやもやさせられたりするのはそのせいだ。この人かもしれない、この人なんじゃないか、なんて思ってそのつもりになっているといつも外される。
ホークはこうもつぶやいた。
「いい人なんて、いったいどこにいるんだよ。ここに連れてきてくれよ」
いましばらくは、こうやって恋人探しをつづけていたほうがいいかもしれない。ジタバタしたってどうにもなるもんでもないし、よく考えてみれば、それほど切羽つまっているわけではない。
アメリカでは、ソウルメイトsoulmateとかツイン・フレームtwin flameとか、そういういいまわしが流行していた。背中がかゆくなるような純日本的な表現を用いるならば“赤い糸”というやつである。
“その人”に出くわしたら、無条件にすべてが理解できる“その人”。ホークはニューエイジ的な発想や精神世界の単語はものすごく苦手で、そういうコンセプトやフレーズは全部ひっくるめて「バンチ・オブ・シットA bunch of shit(うそっぱち)」と鼻で笑い飛ばすのである。(つづく)
※文中敬称略
※この連載は月~金で毎日更新されます
文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

斎藤文彦
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
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