更新日:2017年06月26日 14:38
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加速する憲法改正論議――党本部重鎮が語る自民党の青写真

「自衛隊は違憲」議論が生まれる余地をなくすべきだ

 平和安全法制が成立しましたが、最近の北朝鮮のミサイル問題や中国の動向なども考えると、「自衛隊は違憲」などと言っている場合ではなくなるでしょう。自衛隊は国内では軍隊ではありませんが、海外へ出れば国際法上、軍隊とみなされます。また、海外でPKO活動を行い、国内外で災害が起きれば活動する自衛隊を、国民の多くが評価しています。それにもかかわらず、多くの憲法学者や政党の中には、「自衛隊は違憲」とする議論が今なお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任に思います。  安倍首相は、特に憲法9条に関して、「『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきだ」と述べています。国家と国民のために時には命がけで活動する自衛隊に応え、憲法に「自衛隊を明記すること」は、政治の責任ではないでしょうか。憲法改正で一番大事なのは「自衛隊を明記すること」であることを明確にしたかったから、安倍首相はこの発言をされたのでしょう。

9条2項改正ではなく自衛隊を憲法に「明記」する意味

 憲法改正は国民投票で過半数の賛成を得なければできませんが、その前にまず衆参各院で総議員の3分の2以上の賛成がないと発議できません。そうすると、もちろん自民党単独では発議できず、連立与党の公明党、そして憲法改正に熱心な日本維新の会にも憲法改正論議に乗ってもらいたい。そういうことを政治的に考えれば、安倍首相のあのような発言は「アリ」だと思います。  なぜか。それは今回の安倍首相の発言内容は、「加憲」を主張する公明党の考え方とやや似ているからです。また、安倍首相は5月3日のメッセージでもう一つ、「高等教育についてもすべての国民に真に開かれたものとしなければならない」と述べ、日本維新の会などが提案している教育無償化を盛り込むことにも前向きな考えを示しました。まずは、国会で憲法改正に賛成する勢力をきちんと固めることが大事だと考えたのではないでしょうか。  そもそも自由民主党は昭和30(1955)年11月15日の結党以来、「憲法の自主的改正」を「党の使命」に掲げてきた政党です。しかし、今までは自民党の中でも、憲法改正を進める勢力は大きくありませんでした。その中で、第一次安倍政権下で憲法改正のための詳細なルールを定めた国民投票法が成立しました。そして、再び自民党総裁に返り咲いた安倍首相は、旗印の一つに憲法改正を掲げています。自民党は党の使命を果たすために、安倍首相が中心になって憲法改正を進めていくことになるでしょう。  安倍首相は、自民党が2012年に公表した憲法改正草案について、「そのまま憲法審査会に提案するつもりはない。柔軟性を持って現実的な議論を行う必要がある」と述べています。今までは「9条2項改正」だったので、今回の安倍首相の「9条1項、2項を残して、自衛隊を明記する」という改正案は、自民党内からも異論が出ています。でも、別に変えてもいいのです。それについて議論すればいいのですから、安倍首相はいい問題提起をされたと思います。憲法改正を進める上で、自民党の中でまず議論し、公明党、維新の会とでコンセンサスを得るというのは、当然のことでしょう。
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憲法改正は今後、どのように進むのか?
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