防災の日に考える憲法改正――立憲主義を守るためにこそ緊急事態条項が不可欠
<文/中央大学名誉教授 長尾一紘>
9月1日は防災の日です。この日は災害についての認識を深め、災害に対処する心構えを準備するために制定されました。9月1日という日付は、大正12年(1923年)9月1日に発生し、10万人以上の死者・行方不明者を出した関東大震災に由来しています。
数年前から首都直下型地震が話題とされています。中央防災会議のワーキンググループの報告書によれば、発生すれば老朽化したマンションや木造住宅など約17万5000棟の家屋が全壊、火災が発生し、約41万棟が消失、死亡者は2万3000人、そして倒壊した家屋から脱出できない人々が7万2000人に及ぶとされています。
被災地のほとんどが停電になり、電車などは全線不通、羽田や成田の空港も閉鎖、そして3日目には燃料や食糧の不足が一般的になり、2週間後には、720万人が避難する事態になる、まさに国家的危機が生じるのです。この首都直下型地震は、30年以内に70パーセントという確率で起こるものとされています。
南海トラフ巨大地震についても、東海から、近畿、四国、九州に、大地震が予想されています。太平洋沿岸に大津波が発生し、死者は32万人に及ぶと想定されています。この南海トラフ地震も、30年以内に60~70パーセントの高い確率でその発生が予想されています。
これらの緊急事態にどう対応すべきか。これが現在の日本が直面している最大の課題のひとつです。
災害対策基本法という法律があります。この法律は、民主党の菅直人内閣の時に広く知られるようになりました。そしてこの基本法が、大災害に対して不十分なものであることが明らかになりました。その理由をいくつか挙げてみることにしましょう。
この基本法は災害全般について、まず都道府県レベルで対応し、それでも対応できない場合に政府の介入が想定されています。首都直下型地震のような大災害で国会が作用しなくなった場合などを想定して作られたものではありません。
第二に、この法律においては政府の、私権の制限、交通権の制限などへの権限が必ずしも十分なものではありません。
第三に、法律上の対策には限度があります。やはり憲法上の規定が必要になります。たしかにこの基本法に基づいて、政府は災害緊急事態を宣言することができます。それによって生活必需品の流通などに規制を加えることができることになっています。
ところが、東日本大震災の時、菅内閣はこの災害緊急事態を宣言せず、「平時」の態勢で対応にあたり、批判を浴びました。
首都直下型地震にどう対応するか
災害対策基本法で対応できなかった菅直人内閣
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