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80年代の新社会人を熱狂させた腕時計が20年の時を経て復活。新生「クラブ・ラ・メール」の挑戦



もう一つのこだわりが、80年代のクラブ・ラ・メールと同じく、最新技術と古きよきデザインの融合である。新しいクラブ・ラ・メールは、ブランドの伝統に基づいたトラッドな雰囲気にシンプルモダンのエッセンスを取り入れた“Port Cassis Automatic”シリーズ。そして、トラッドなデザインと機械式時計の構造が存分に楽しめる“Trad Open Heart”シリーズ(全8モデル)が開発された。各シリーズには、異なる技術がデザインに取り入れられている。それぞれの特徴を村本氏が教えてくれた。

「“Port Cassis Automatic”シリーズは、文字板と針、ガラスが緩やかにカーブしています。50年代に流行した腕時計は、このカーブが激しいのですが、そのエッセンスを取り入れることで、アンティーク感を演出しています。また、“Trad Open Heart”は、文字板をエンボス加工で仕上げています」

クラブ・ラ・メール

2016年に復活したウオッチブランド「クラブ・ラ・メール」。高級感を感じさせるデザインと、手の届きやすい価格帯を両立させた

 エンボス加工とは、裏側から文字や絵柄の型を押し上げて、凹凸をつける昔ながらの加工方法のこと。最近の時計は文字板の上に数字のパーツを置いて仕上げているものが多いなか、このシリーズではあえてエンボス加工を採用した。

「文字板に数字を置くと、隣接した場所がくっきりするので、シャープな印象になります。ですが、エンボス加工ですと、柔らかくて優しい雰囲気に仕上がります」

クラブ・ラ・メール

ふたつのシリーズとも、メタルバンドだけではなく、皮バンドも用意。メタルバンドは年配に、革バンドは若い世代を中心に人気があるそうだ

シチズンだから実現できた品質と価格設定


 ディテールへのこだわりに気づくことで、機械式腕時計ならではの良さを知る――。復活したクラブ・ラ・メールは、村本氏たちの狙いどおり、腕時計の魅力やおもしろさが味わえるモデルとなっている。だが、理想を実現できたのは、長い歴史がある、シチズン独自の技術力や生産力があればこそ。

クラブ・ラ・メール

異なる時代で、ニーズに合わせたクラブ・ラ・メールを生み出した大場氏と村本氏。開発秘話を語り合うなかで、時折、大場氏が冗談を口にするなど、インタビューは和気藹々とした雰囲気で進行した

「50年代や60年代の流行を取り入れようとしても、技術力がなければ実現するのは難しいと思います。たとえば、針を曲げるにしても、やりすぎると針が盤面に当たってしまうので、繊細な力加減が必要になります。また、大量生産ができる環境も不可欠です。弊社では、時計の機械を作るラインを約40年にわたって維持しながら、つねに品質やコストパフォーマンスの改善を行ってきました。手前味噌ですが、新しいクラブ・ラ・メールの品質は、3万円以上の価値があると自負しています」

 今年の夏には、海のイメージを強調した、新たなシリーズの展開も予定されている。若い世代に時計のおもしろさを伝える、新生クラブ・ラ・メールの挑戦は続く。

⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1362166

クラブ・ラ・メール

新しいクラブ・ラ・メールのラインナップ。ブランドのロゴも一新され、親しみやすいイメージを重視して、猫と海鳥があしらわれている

<クラブ・ラ・メール Port Cassis Automatic>
●希望小売価格:2万7000~3万2000円(税別)●全国のロフト内にある時計専門店などで販売中●ガラス:球面クリスタルガラス●ケース径/厚み:縦38×/厚12.4mm(設計値)●主な機能:機械式時計/自動巻き+手巻き/デイト/シースルーバック/日常生活用防水「Toyota Safety Sense P」を採用

<クラブ・ラ・メール Trad Open Heart>
●希望小売価格:2万5000~3万円(税別)●全国のロフト内にある時計専門店などで販売中●ガラス:クリスタルガラス●ケース径/厚み:縦38×/厚11mm(設計値)●主な機能:機械式時計/自動巻き+手巻き/シースルーバック/日常生活用防水

取材・文/黒田知道 撮影/岡戸雅樹

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