番外編:デンキウナギよりシビれた“天空の花火大会”
魚のことしか頭にない(ように見える)小塚氏。旅に出た動機を「初恋の彼女にフラれて見返すため」というが、その恋愛事情やいかに。『情熱大陸』という追い風まで受け、果たして……!
「あ、やっぱりそこ聞いてきますか(笑)」
ピライーバをめぐる旅から4か月後の夏。別のテレビ番組からアマゾンを再訪して「デンキウナギを釣ってほしい」との依頼があった。しかし小塚氏は当初、乗り気ではなかったという。なぜなら、“
先約”があったからだ。
「ロケを依頼されたお盆に、付き合ったばかりの彼女と、地元の花火大会に行く約束をしていたんで……これは、僕にとって
アマゾンよりも遠かったわけです(汗)。しかも、依頼からロケまでがすごい急なスケジュールで。だからギャラも良かった(笑)。当時は28歳、テレビに出て急に財布が暖かくなると、普通だったらキャバクラや風俗に行くなり、豪遊したりするのかもしれませんが……自分でいうのもなんですが、魚としかコミュニケーションがとれないオタクなんですよ」
妙案がひらめいた小塚氏は、地元の花火大会は諦め、テレビの依頼を受けることに決める。そして当時まだ学生だった
彼女の口座に航空券代の25万円を振り込み、こう言い残してひと足先に日本を発った。
「おいでよ南米へ。
マチュピチュでピチュピチュしようぜ! あと、“
アレ”を持ってくるのを忘れずに~!?」
無事にテレビの撮影が終わり、翌日にペルーの首都リマで彼女と集合することになった小塚氏。
デンキウナギ
ボリビアのウユニ塩湖、チチカカ湖を経由して……ペルーのマチュピチュで“天空の花火大会”を開催した。
「“
アレ”とは、
浴衣のことですよ(笑)。この旅で見たアンデスの景色は、
デンキウナギ以上にシビれました。彼女との馴れ初めですか? 自分が大学生のころ、旅代を稼ぐために塾講師をしてたとき、最前列にいて、可愛い子だなと。当時中学生ですから、手を出したら犯罪ですね。8年粘って、地球の裏側まで……
人生の勝利でしたね(笑)」
マチュピチュ
小塚氏は自身のことを「
怪魚のストーカーだ」という。「大物釣りに必要なのは、ストーカーに近い執着心」だと。それは恋愛においても同じなのかもしれない……。しかしながら、若き日の恋愛とは淡く切ないものだ。その彼女とは、半年後に別れることになる。小塚氏は「これぞ人生」と懐かしそうに当時を振り返るが、とはいえ互いにとって忘れられない旅だったことは間違いない(?)。
「そんな黒歴史にも触れた今回の著書『怪魚大全』ですが、発売後に元カノの妹さんに会って、2冊渡してあります。妹さん判断で捨ててくれるもよし、姉(元カノ)の手に届くもよし……旅(ストーリー)は続く、って感じですか。我ながらキモいですね(笑)」
<取材・文/藤井敦年>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):
@FujiiAtsutoshi