「タモリのいいところは、ネタをすぐ自分のモノにする」喜劇人・小松政夫が明かす、大御所スターの知られざる伝説
先日行われた「第10回したまちコメディ映画祭in台東」で、コメディ栄誉賞を受賞したことも記憶に新しい、喜劇人・小松政夫。そんな小松氏が芸能生活50年を振り返り、綴った著書『時代とフザケた男 ~エノケンからAKB48までを笑わせ続ける喜劇人』が話題だ。
本書について小松氏は「AKB48からエノケン先生までバリバリ現役で絡んだのはアタシだけじゃないのかなあ。これはひとつの貴重な日本芸能史ではないか!?」と、執筆の動機を語っている。
確かに本書では、高倉健、森光子、吉永小百合、キャンディーズなどと小松氏との交友録や、昭和を代表するスターたちの素顔が明かされている。なかでも印象的なのが名優・勝新太郎の章だ。
’82年に52歳の若さで亡くなったコメディアン、三波伸介。その通夜の席での勝新太郎の振る舞いを小松氏はこう述懐する。
「弔問のお客さんもそろそろはけて、明日も早いからアタシもここらへんで……みたいなときに。家の前にピッカピカのジャガーがやってきた。それがキッと停まって、ヌッと降りてくる男の影。モーゼの十戒みたいにさ、男が歩き出すと海が割れるみたいに人並みが分かれる。『遅くなりました……勝です』。
勝新太郎さんですよ。映画のワンシーンみたいにね、絶妙の間をとってねぇ……絵になるんだ。スターって独特のオーラがあるんだよね。それまでお開きムードだったお通夜の雰囲気がガラッと変わった。場を全部持っていっちゃう、すでに男と男の一生の別れのシーンですよ。伊東四朗さんが着せた黒の紋付き袴姿の三波伸介さんの亡きがらに、勝さんがそっと近づく。『伸介ちゃん、寝てんだろ? 起きろよ……い・そ・ぐ・なよ』。
伊東さんも奥さんも息子さんもアタシも、残ってたお通夜のお客さんも全員、涙です。名優の力はスゴイね」
しんみりとした葬儀の場ですら自らの空気に変えてしまう。そんな勝新太郎のスター性が垣間見える瞬間だ。一方で、本書にはビートたけし、タモリ、黒柳徹子など今もテレビ界の第一線で活躍する大御所たちの若き頃も綴られている。
ピッカピカのジャガーで弔問にやってきた勝新太郎
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『時代とフザケた男』 エノケンからAKB48までを笑わせ続ける喜劇人 |
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