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甲類焼酎は「不味い安酒」という誤解 ペットボトルだって美味い

様々な個性が楽しめる甲類焼酎の進化

 どちらにせよ、大容量のペットボトルに入っている甲類焼酎はほんの一部で、全国に甲類焼酎を製造している会社は60社以上あるのです。多くは清酒や乙類焼酎をつくっている地方の酒蔵で、私はそんな蔵のひとつを訪問したことがあります。  巨大な連続式蒸留機は、マンション一棟分くらいありました。蔵元と一緒に階段を上って最上階まで行くと、そこからは清酒蔵の全貌が見渡せました。そのとき蔵元は「もう連続蒸留機は売って甲類はやらないつもりです」と言ったのです。理由は、大手メーカーとの価格競争に対抗できないからだということでした。  キンミヤのようにホッピーと手を組んでブランドイメージがはっきりしている甲類はいいとして、全国の小さな甲類たちはこれからどうなるのだろうかと、心配になった瞬間でした。  連続式蒸留機にもいろいろな種類があります。カフェ式以後の技術革新はすさまじく、カフェ式の単純な蒸留塔ひとつの構造は、複雑で不純物を取り除く精留塔を多く備えたアロスパス式へ、そして現代のスーパーアロスパス式へと進化しました。  現在多くの甲類メーカーが採用しているのが、スーパーアロスパス式とのことです。不純物の抽出分離を極限まで効率化しているので、より磨きのかかったアルコールを、効率的かつ安価に抽出することができるのです。  酎ハイブームの頃は、どうせ割ってしまうのだからとなるべくクセのない甲類が喜ばれましたが、今は甲類も個性化の時代だといいます。それは、1974年のホワイトレボリューションに端を発しています。このときアメリカでウォッカの消費がバーボンを抜き、世界的に無色透明の酒が流行したのです。  日本の甲類も「この流れに乗らなくちゃ」と、従来のピュアな甲類焼酎に、樽貯蔵した甲類焼酎をブレンドした商品などを生み出しました。そのほか、精留をおだやかに行って原料の風味を残すようにしたものや、糖類やクエン酸、酒石酸なども加えて良いことになっているので、それらを加えるもの、反対に無添加を謳うものなど、じつは各メーカーで少しずつ味の差別化を図っているのです。

著者オススメのペットボトル焼酎は宝焼酎の「純」

 私は大容量ペットボトルの甲類焼酎を炭酸で割って、ポッカレモンを少し入れて飲むのが好きです。でも、古い下町の居酒屋や旅先などで、まったく知らない甲類焼酎に出会ったときは、そちらを飲みます。少し高いかもしれませんが、大手メーカーとはまた違った味わいがあると思うからです。 【江口まゆみ】 神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学卒業。酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本国内でも日本酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーの現場を100軒以上訪ねる。酒に関する著書多数。SSI認定利き酒師、JCBA認定ビアテイスター
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