雑学

座間9遺体事件、大手マスコミの取材方法に賛否の声――ネット時代の“メディアスクラム”問題

 座間のアパートで9人の遺体が見つかった事件。前代未聞のシリアルキラー。今回はSNSやインターネットを舞台にした今の時代らしい手口だっただけに、各マスコミがSNS上で新しい情報を得るべく、少しでも事件と関わりのある人物と接触しようと躍起になっていた。

メディアスクラム

SNSのつぶやきにマスコミが殺到…ネット時代のメディアスクラムに賛否の声


「突然のメッセージで失礼いたします。××新聞社会部の記者ですが……」

 11月2日、東京都内の大学に通うマミコさん(仮名)のインスタグラムに突如送られてきたメッセージ。実在する新聞社の記者を名乗るアカウントからではあったが、「イタズラではないか?」と思ったマミコさんは、メッセージを無視してアルバイトに励んでいた。ところが……。

「2時間ほどして、休憩時間に携帯電話を見ると、インスタグラムには別の新聞社やテレビ局からのメッセージが、そしてツイッターやフェイスブックにまで、全部で十数通近くのメッセージが届いていたんです。すべて『座間の事件の件で』と言っていて、一瞬、家族や友人が『殺されたのでは?』と思い、背筋が凍りました」

 結論から言えば、かつてマミコさんが通っていた高校の後輩にあたる人物が、座間事件の被害者であったわけだが、マミコさんはこの被害者とはなんの面識もなかった。

 どうやらマミコさんがSNSに載せていた投稿から、被害者と“高校”の共通点を見出したらしい。その後、マミコさんの高校時代の友人や、なんら関係のないマミコさんの大学の友人にまで、マスコミが接触しようとしていたことも発覚。マミコさんの元には、友人からの問い合わせが相次いだのだった。

「まるで私が事件に関わったような言い方をして、私の友人に接触してきたテレビ局や週刊誌までありました。ひどすぎて抗議のメールをしましたが、一切返事もナシ。バイト先にまで電話をしてきたせいで、『お前、事件に関わりがあるのか?』と噂まで立ちました。マスコミは正義だなんだと言って、無関係の一般人を巻き込んでもお構いなしなんでしょうか?」

 同じように憤るのは、群馬県在住の高校生・Aさん。高校の同級生が座間の事件で残念ながら亡くなっていた。被害者の身元が判明する少し前から、学校の周辺にマスコミが押し寄せ、駅やファミレス、コンビニなどいく先々で「質問攻め」にあったという。

「マスコミのひとから『○○さんの知り合いですか?』と聞かれたから『○○が被害者なんですか?』と返すと、『それは答えられない』といってはぐらかす。『ご飯をおごるから、なんでもいいので話を聞かせてください』ってナンパみたいなことしてくる記者もいて気味が悪かった」

 さらに、深夜10時を回ってから訪ねてきた報道番組のディレクターまでいたという。被害者の同級生である未成年者の父が、このように吐き捨てる。

「うちの娘を訪ねてきたらしいが……。夜の10時をまわっており『非常識だ』というと『大きな事件ですので』と返してきた。バカ言うんじゃない、と追い返したけど、さすがにひどすぎやしませんか」

 だが、娘は後日、別の新聞記者から接触を受けて、取材に応じたという。それは、ほとんどのマスコミが「被害者には自殺願望があった」と報じることに、異議を唱えたかったからである。

「私のところにも、ツイッターを通じて十数社からの問い合わせがありました。ほとんど無視しましたが、ある新聞社の記者とだけはやり取りをしました。とても親切で、“真実を暴きたい”という姿勢が感じられたからです。私は、被害者と仲の良い友人に声をかけ、この記者であれば話をしていいんじゃないかと説明し、みんなで取材に応じたのです」

 結果この新聞社だけが、それまでに語られず報じられなかった被害者の人となりについて書いた。友人らの思い、そして被害者の無念が初めて詳らかにされた瞬間だったのだ。

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ネット取材の正しいやり方はだれもわからない

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