更新日:2022年11月29日 12:02
エンタメ

メタラーによるジャパメタ蔑視を打ち破ったX JAPAN――「紅」とYOSHIKIの突破力

メタラーからバカにされていた“歌謡メタル”

 2017年末の『第68回NHK紅白歌合戦』でも演奏されたX JAPANの代表曲「紅」は、彼らがメジャー・デビューした1989年、デビューアルバム『BLUE BLOOD』からリカットされた1stシングル曲である。当時さまざまな音楽番組で演奏され、同年の日本有線大賞の最優秀新人賞受賞曲となった。また甲子園応援曲としても演奏されているなど、もはや日本人なら誰でも知っている定番曲でもある。  同楽曲は、インディーズ時代の初期から存在しているが、実は「ボツ曲扱い」となっていた時期もあったという逸話は、ファンには広く知られているところだ。  さて、その「紅」の歴史を紐解いてみたい。それは、メタル界隈の「“歌謡メタル”嫌悪」との闘いだった。

Xが表紙を飾った『ロッキンf別冊 STREET FIGHTING MEN 2』(1989年)。その後ろに『ロッキンf特別編集 メタルインディーズマニア』(1986年)、『ロッキンf別冊 New Age Attack メタル・インディーズ・マニア 2』(1987年)(筆者撮影)

 ジャパメタがもっとも盛り上がった1985年、聖飢魔II、ANTHEM、SHOW-YAが立て続けにメジャー・デビューし、歌謡曲テイストのジャパメタの楽曲は、お茶の間にもしばしば届けられるようになった。  また早川めぐみもこの年にデビュー。彼女のキャッチ・コピーは“歌謡・メタル・エンジェル・めぐちゃん”というもので、この頃、多くのメタラーにとって“歌謡メタル”というキーワードは、嫌悪の対象だった。  前年には、ACTON!が“歌謡メタル”路線でメジャー・デビューしており、偏見を取り除いて聴けば、質の高い楽曲が揃っているバンドだったが、やはりメタラーからはバカにされていた。
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実は“ボツ曲扱い”だった「紅」
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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