更新日:2022年11月29日 12:02
エンタメ

メタラーによるジャパメタ蔑視を打ち破ったX JAPAN――「紅」とYOSHIKIの突破力

YOSHIKIにとっては「紅」は「メイン曲扱い」だった

 86~88年あたりは、メタラー間でスラッシュメタルが人気だった時期。METALLICAの3rdアルバム『Master of Puppets』(邦題:メタル・マスター)は、1986年3月、SLAYERの3rdアルバム『Reign in Blood』は、同年10月にリリースされている。  Xでスラッシュ系の楽曲といえば「Stab Me In The Back」が思い出されるが、同楽曲はHIKARUとJUN在籍時の頃に初披露され、翌1987年2月にリリースされたスラッシュ系バンドを集めたオムニバス・アルバム『SKULL THRASH ZONE VOLUME.Ⅰ』にも収録された。

スラッシュ系バンドを集めたオムニバス・アルバム『SKULL THRASH ZONE VOLUME.Ⅰ』。Xのスラッシュ系の楽曲「Stab Me In The Back」も収録されている。

 当時のXは、ハードコア~スラッシュの色合いが濃く、同時に歌謡曲的なメロディも内包するバンドで、この頃からすでに「何でもあり感」が漂っていた。  HIKARUとJUNは、1986年10月に脱退するが、「紅」は、その後の11月および12月のライヴで演奏された。また、1987年4月10日に神楽坂EXPLOSIONで、HIDE<g>とPATA<g>を加えたメジャー・デビュー時のメンバーによる初ライヴが行なわれたが、そのライヴでも演奏されている。  また、ジャパメタラーにとってのマストアイテム本『メタル・インディーズ・マニア』(1986年11月、立東社)で特集されたバンド・ガイドに掲載されたXの紹介記事には、YOSHIKIとTOSHI、TAIJIのメンバー3人が名を連ね、「3rdEP『紅』を、87年1月にEXTASY RECORDSよりリリース予定」と書いてある。  ということは、つまりYOSHIKIにとって「紅」は、HIDE加入以前から「メイン曲扱い」の楽曲だったということなのだ。決して「ボツ曲扱い」ではなかったのである。
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メタラーによる蔑視に打ち勝った「紅」
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

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