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ヤクザ、薬物中毒、性犯罪者…刑務所内でのヒエラルキーで一番下なのは誰?

禁断症状で暴れ出す薬物中毒者は疎ましい存在

 ヤクザに比べて疎ましく思われてしまうのが薬物中毒の受刑者であるという。身体的依存・精神的依存がともに高い覚せい剤で捕まった者などは禁断症状で苦しむことになる。薬物依存症はしっかりとした手順を踏んで直すべきもの。いきなりクスリを断ち切られるのだからそりゃ大変だ。 「中毒者はまず個室に入れられるんや。もちろん、そのうち禁断症状で暴れだすやろ? そしたら保護房に連れていかれて隔離や。手錠をかけられたまま暗闇に放り込まれるんや」
西成

西成のあいりん地区で見かけた看板

 保護房に入れられた中毒者は暴れる、ドアを蹴る、刑務官にとびかかる、叫ぶなどもう地獄。疲れ果てておとなしくなったところで個室に戻されるそうだ。そして2~3日経つとまた暴れだすので再び保護房へ。それを延々繰り返し、退所後すぐにクスリに手を出すことが多いという。 「2~3人どころじゃないで? そんなやつがいっぱいおるんや。これホンマの話やで?」  保護房の話になると一気に語気が強まる五十嵐さん。彼は重度の依存症ではなかったため相部屋だったというが、覚せい剤での逮捕である。刑務所内でよっぽどつらい思いをしてきたのだろうか。

底辺は性犯罪者、下着泥棒は「おい、おパンツ!」と呼ばれる

 薬物中毒者と積極的に関わろうとする者はいない、というよりも重症な人間はそもそも隔離されているので接点がない。数ある犯罪の中でもっとも肩身が狭い者。それは性犯罪者だそうだ。
パンツ

画像提供:ピクスタ

「強姦や児童関係は人間として終っているからみんな相手にせんけどな、下着泥棒は格好の餌食や。みんなバカにしよる。下着泥棒さんとは呼ばんで。敬意を込めて『おパンツ泥棒さん』と呼ぶんや」  話しかけるときは『やあ、おパンツ泥棒さん』というらしいが、遠くから呼ぶときは『おい、おパンツ!』と叫ぶらしい。薬物に比べるとよっぽど軽い罪な気もするが、バカにされるという観点で見るとぶっちぎりで底辺のようだ。  もともと窃盗罪で服役していた平尾容疑者。逃走中も窃盗を繰り返し、誰もが知っている「泥棒」となったわけだが、これから服役する刑務所では一体何と揶揄されるのだろうか。ともあれ、おパンツ泥棒での逮捕だけは絶対に免れたいものだ……。<取材・文・撮影/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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