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タダで観戦できる五輪種目、プールでなく海でやる競泳が穴場でおもしろい

初観戦者には予想外の展開が次々と発生……

 せめて順位だけでもわかれば、マラソンのラジオ中継のように楽しめるのですが、運営サイドが提供してくれるのは断片的な情報のみ。スピーカーからときおり「情報が入ってまいりましたぁ!」と実況の方がしゃべりだし、先頭集団を誰が泳いでいるのかを教えてくれるのがせいぜいです。入ってくる情報を待っているだけじゃなく、もっと積極的に監視の船とかから情報を入れて、競馬中継のように順位を常に言いつづけてほしいところですが……。 「クッソ暇やの……」  見えないし、今どうなってるのかもわからないので、開始10分で猛烈にヒマです。打ち寄せる波を見ながら、選手が戻ってくるのをじっと待っているだけの時間。はて、これは熟達の観戦者たちはどうしているのだろう?と疑問に思い、桟橋から戦況を見守る観衆の様子を観察したところ、談笑したりパン食べたりスマホいじったりしているじゃないですか。  よかった、みんなヒマだったんだ。

泳ぎ終わった選手や、コーチ、物好きが総勢100人ほど見守っていました

ちなみにビーチにはVIP感あふれる観客席も設置

 ヒマなことは運営も先刻承知らしく、なんと、7.5キロの部と5キロの部が今まさに海を泳いでいるときに、10キロの部の表彰式をおっぱじめると言い出します。普通なら「えぇぇぇぇ今!?」となるところですが、むしろちょうどいい。ちょうどヒマだった。僕も桟橋からビーチに戻り、表彰式を見守ることに。  たどただしい実況が記録の読み上げの際に分の単位と秒の単位をカンチガイしつづけ、「1時間56秒!」などとリオ五輪の優勝タイム(※男子10キロの部だと1時間52分59秒)を大幅に上回る圧倒的好タイムで各選手を紹介していきます。女子10キロの部優勝はリオ五輪代表の貴田裕美選手。男子の優勝は野中大暉選手。クリアファイルに挟まれた賞状を誇らしげに受け取る様子を、僕もしっかりと見守りました。ちょうどヒマだったので。

貴田選手らは8月に当地で行なわれるパンパシフィック選手権に日本代表として出場するとのこと

 さて、しっかりと表彰式を見守ったのちに桟橋に取って返すと、選手たちは近くまで戻ってきていました。ブイの近くには「ここを通過すること」というゲートがありますが、途中経路は基本的に自由なようで、選手それぞれでコース取りもさまざまです。  海だけあって狙い通りの最短距離を泳ぐのは難しいらしく、選手によっては大きく波に流されて遠回りをするものも。桟橋からもコーチ・現役選手らを中心に、「流されてるぞ!」などの檄が飛びますが、惜しむらくは誰が流されているのかがわからないこと。  海を泳いでいる人の見分けは当然困難なわけですが、コーチ陣であれば泳法などから誰が誰なのかわかるのかな?と期待していた僕は、「誰が流されているのか知りたい」という気持ちを抱えて、目の前で交わされる激論に耳をすまします。 「流されてる!」 「A選手じゃない?」 「いや、B選手やろ」 「いや、Aだって」 「Bに見える」 「いやいやBはアッチだろ」 「アレはC選手じゃない?」  ぐぬぬ……コーチ陣もまるでわかっておらんではないか……。あてずっぽうではないか……。激論の間に徐々に選手が近づいてきまして、リストバンドの色によってようやく流されている選手がAなのかBなのかCなのかは見分けることができましたが、なかなかに観戦のハードルは高いなと思わされました。コーチ・現役選手・観客がみんなで「早く実況から情報こないかなぁ」と待っている図というのは、なかなかに穴場感がありますよね。大きく流される選手や、周回数を間違えて1周早くゴールに向かう選手など、コース取りの面白アクシデントは頻発しているのに、もったいない!

ゲートをくぐって泳いでいく選手たち

近くまでくればリストバンドの色や手・肩に書いた番号で見分けられる

赤いブイを目指して泳ぐはずが、赤いジャケットの係員を目指して泳いでしまい、大きくルートを外れていく選手も。あと、それにくっついて一緒に外れていく選手も

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穴場要素十分! 楽しみ方次第で十分に満足できる
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