伊豆が“東京五輪ブーム”で日本一早く沸騰しているワケ
~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第23回~
※前回の話…スポーツ好きブロガーのフモフモ編集長が、東京五輪でチケットが買えそうな穴場競技探訪へと出かけました。今回の穴場候補は自転車。“ケイリン”で世界的に名を轟かせながらも五輪競技としての日本国民の注目度はイマイチ。“東京五輪”なのに会場を伊豆に飛ばされるなんて穴場に違いないと予想したフモフモ編集長。しかし、最寄りの修善寺駅から車で30分、一見すると廃墟のような佇まいの会場では驚きの光景が待ち構えていた……
これだけ遠くて廃墟っぽいと、さぞやガラガラなんだろうとお思いでしょう。
僕もそう思っていました。
10人くらいしか客がいなくてガラガラだろうと。
しかし、予想に反して駐車場には大量の車。そして自転車競技会場のベロドロームに次々に吸い込まれていく人、人、人。会場に飛び込んでみれば、ロビーには人があふれ、スタンドはビッシリと観戦客で埋まっています。
「え、ウソでしょ!?」
「自転車&伊豆なのにこんなに客がいるわけない!」
「絶対にサクラ!!」
と穴場慣れした僕も、心底驚く光景でした。
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メインスタンドもバックスタンドも人でビッシリ。約1800人収容という会場は大入り満員です。基本的には地元からのお客さんのようで、入場口でも伊豆市住民専用の受付に来訪者が集中しています。売店のオジサンに聞けば、これはベロドローム開場以来の大入りとのこと。確かに地元住民には無料招待があり、近隣の競輪場でも招待券を配布しているそうですが、タダにしたってこれだけ集まるのは尋常ではありません。東京五輪開催に向けて、現地は大変な盛り上がりのようです。
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アカン、いつの間にか地元では「伊豆オリンピック」になってる。
売店では地元名産の三島コロッケやら鹿肉のステーキが販売され、伊豆をアピールする気マンマン。東京でもまだそんな盛り上がっていないのに、すでにどこよりも五輪気分が高まっています。
そして単に数が多いだけでなく、競輪場でタダ券を配布しただけあって伊豆のファンは自転車競技への理解も非常に高い。
基本的に自転車競技は「一斉にスタートして早くゴールに着いた選手が勝ち」という単純明快な戦いです。ただ、「ポイントレース」「マディソン」などの種目では、若干わかりにくい部分があります。これらの種目はゴールにたどり着いたときの順位だけでなく、全部で20キロ走るうちの「2キロごとの通過順位」だったり「10周ごとの通過順位」だったりでポイントを獲得する仕組みになっているのです。
そんな種目があることなど、一般にはほとんど知られていないことだと思うのですが、さすが“自転車どころ”伊豆の住民たち。ポイント獲得が決まる周回では、ひときわ大きな歓声が上がり、ゴール通過に合わせて大きな拍手が起きます。「直前に競輪と同じ鐘が鳴ってるからじゃないですかね?」などと言ってはいけません。伊豆は自転車に熱いのです!
観衆の盛り上がりもさることながら、会場自体も素晴らしい。ドイツの職人が板を貼り付けて作ったという国内唯一の全天候型トラックは、見るだけでも壮観です。板張りの美しいトラックは、最大斜度45度という急角度のバンクを備え、身を乗り出せばまるで崖のよう。観客席とトラックの距離は極めて近く、ゴール後には手を出して選手とハイタッチすることも可能です。
そこを時速60キロにも及ぶスピードで選手たちは周回していきます。自転車を漕ぎトラックを駆けるゴォォォという音、近くの板を通過していくときの床の振動、通過後に巻き起こる風。臨場感という意味ではコレ以上ないほどの体験です。
ここが伊豆ということを除けば最高の観戦環境です!
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自転車競技を見ていて印象的なのは、静から動へのダイナミックな変化。ケイリン(※いわゆる公営競技の競輪から生まれた種目)では、最後の1周までつづく長い駆け引きと、一気に加速していくラストの追い込みで、まるで別の種目を見ているかのような変化があります。そのダイナミズムをさらに濃密にするのが1対1のマッチレースとなる「スプリント」の種目。1キロを1分ほどで走破する短距離レースでは、ひとつの仕掛けが大きく勝負を左右します。そのタイミングを探る駆け引きは「静」と言うよりは、「静止」と言っていいほど。
先行する側は、とにかく自分が前にいれば勝ちなのですから、相手が仕掛けてくるまでなるべくラクにゆっくり走りたい。追いかける側は、相手の身体を風除けにしつつ勝負所で一気に抜き去り、そのまま勝負を決めたい。そんな想いが交錯した結果、最初の1周などは歩くより遅いスピードでノロノロと走っていきます。ときにはほとんど静止して、後ろを振り返りながら「早く抜けよ」「お前こそ早く進め」「どうぞどうぞ」と譲り合いをする選手まで。
それが最後の1周では真横になるほど車体を傾け、猛スピードでバンクを疾走するのです。ためて、ためて、ためて、爆発する。目の肥えた地元観衆でなくとも「差せー!!」「まくれー!!」と熱狂してしまうことでしょう。勝敗を予想したり、友だちと小銭を賭けたりしたら、さらに楽しくなるかもしれません。
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レースの競り合いはもちろん、ときどき落車のアクシデントもあったりして、一日見ていても飽きない楽しさが今回の観戦にはありました。会場の雰囲気も含めて、非常にオススメできる現地観戦向け競技です。ただ、穴場ではありません。地元観衆は非常に熱気が高く、移動の面でも自家用車でこられるという優位性があり、そこに割って入るのは困難でしょう。
東京五輪本番では仮設席の増設を含めて、現状の約1800席から約4700席まで増席するという話ですが、会場には空きスペースはほとんどなく、相当なすし詰めになる予感。そして、会場のイス以上にボトルネックとなるのはバスのイス。帰り道にバスの運転手さんが話していたことによれば、会場までの道路は狭く、バスがまともにすれ違える場所は3ヶ所程しかないのだとか。実際に乗車した便でも、民家の脇の細道を通ったり、対向車とすれ違うために路肩に寄せて一時停止する場面がありました。
シャトルバスを増便するのは可能だとしても、道路を広げるのは難しい。道路を広げる手間をかけるくらいなら、お台場の空き地に新しいトラックを建てても一緒ですから。修善寺の温泉宿に前泊して8キロ歩いていくか、思い切って会場付近でテントでも張るか。会場にたどりつければ楽しいが、行くまでが難しいという意味で、伊豆オリンピックの自転車競技は「難所」と言えるのではないでしょうか。穴場ではなく難所。うっかりチケットを手に入れてしまった場合は、なるべく早く現地に行かれることをオススメします。スムーズに移動しても東京から3時間掛かりますので。
なお、これを何に使うとかの説明は特にありませんでした!
大きめの箸置きにでもしてください!

※フモフモ編集長の「今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪」第1回~の全バックナンバーはこちら
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