更新日:2019年08月01日 22:56
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プーチンがいる限り、日本はロシアとマトモな交渉ができない…日本人が知らないプーチンの実像

プーチンがいる限り、日本はロシアとマトモな交渉ができると思うな

 プーチンを「反中」と称する人もいるが、何を指してのことだろう。中国との国境交渉では、3分の2を譲り渡した。それでいながら、国内では半々で折半したとしか報道させない。  そもそも、中国とロシアは上海協力機構を結んでいる軍事同盟国だ。親中に決まっている。むしろ、「媚中」と言い切っても過言ではない。国内では強権を振るうプーチンも、中国に逆らったことは一度もない。  それも当然で、プーチンの野望は旧ソ連の版図を奪回することである。グルジアもウクライナも、軍事侵攻で領土を奪われた。プーチンから見れば、西で欧米と喧嘩している以上、東で中国と事を構えるわけにはいかないのだ。シベリアには中国人が大量入植しているが、見て見ぬふりである。のみならず、プーチンの故郷であるサンクトペテルブルクのような都心部にも、チャイナタウンが跋扈している。  プーチンはロシアの愛国者なのだろうかというと、それも疑問だ。  ロシア憲法では、大統領は連続3選できない。そこで自らは首相に退き、最側近のドミトリー・メドベージェフを大統領に据えたことがある。今、メドベージェフは再びプーチンの下で首相を務め、忠勤に励んでいる。そのメドベージェフは、ガスプロムという財閥の会長であった。プーチン自身もガスプロムという特権企業の利益代表である。どれくらいの特権があるかと言うと、法律で重武装を認められているくらいだ。  かつて、イギリスは東インド会社という国策会社を使い、インド人から搾取した。ガスプロムはロシア人から搾取しているのだ。同胞から。  ガスプロムの最大顧客は中国なのだから、プーチンが中国に逆らえないのもうなずける。  昨年、ドイツのゲアハルト・シュレーダー前首相が、ガスプロムの事実上の傘下企業のロスネフチ社の会長に選任された。これ、EUの制裁対象企業なのだが。シュレーダーは現職時にやたらと反日的言動が多かったが、お里が知れる。 ……以上、急にプーチンの話をしたというのも、この前、師匠とプーチンの話題になり、その“酔人談議”をそのまま原稿にしているだけなのだが。師匠によれば、ロシア語には「安全」という単語はないそうだ。あるのは「無危険」のみとか。  先日も米露首脳会談が行われたが、外交には「何も成果がないことが成果」「余計な結果にならなければ良し」という場合もあるのだ。  我が国は、アメリカと軍事同盟を強めるほかない。プーチンある限り、ロシアと交渉できると思うな。<文/倉山 満>
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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