雑学

デリヘル嬢との恋路に、立ちはだかった戦国武将――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第34話>



馬場さんの戦いは続くのだ。たぶん


 どうもこの女のコ、お客に対して抱いた好感度みたいなものが「お礼日記」に現れやすい。良い感触の時は日記も長く、内容も具体的、テンションも高い。

 反面、いまいちなときは文章も淡白で抽象的だ。告白は書いてないだろうけど、彼女が馬場さんに対して感じた思いを「お礼日記」から読み取ることが可能だ。

「じゃあ読みますよ」

「読んでくれ、読んでくれ!」

ドキドキしながら「ホテル キャメル〇ンの新規様☆彡」のリンクをタップする。そして、ついに馬場さんへのお礼日記が開かれた!


「真田幸村」


時が止まった。

本当に、真田幸村としか書かれていなかった。本当にそれだけだ。

「なんだよそれ」

馬場さんが怪訝な表情を見せる。こっちが聞きたいわ。なんだよ、これ。

「もしかしてそういう武将の話とかしました?

ちょっとした。好きな武将の話」

「それだ」

 きっと、彼女は本当に馬場さんのことなんて興味なかったんだと思う。どうでもよかったんだと思う。印象も薄かったんじゃないか。お礼日記を書こうと思い返したとき、よくわからない武将の話しか思い出せなかったんじゃないか。

「照れ隠しかな」

 んなわけあるか。

「単純に馬場さんのこと興味ないんだと思いますよ。そりゃ彼女も仕事ですからプレイ中はそう言う素振り見せますよ。でも、さすがにお礼日記に「真田幸村」だけはありえないですよ」

 けっこうな正論をいうと馬場さんは傷ついた様子だった。

「やっぱ競売の血統の話をするべきだったか~」

 とか言ってたけど、それでもお礼日記には「ナスルーラのクロス」としか書かれなかったと思う。

 情報化社会は風俗の在り方も変えた。いまや、動画で見せたり、こまめにお礼日記を書いたり、季節ごとに衣装を変えた写真をアップしたり、お店や風俗嬢の手間は相当なものだ。我々はその幾多の情報を見て女の子を品定めする。それはまるで競馬のパドックのようだ。

「じゃあ、俺は競馬に戻るわ」

 そう言って馬場さんはWINSのB館へと消えていった。

 馬場さんは言った、デリヘルは勝ち取るものだ、と。幾多の情報を収集し、その中からよい子を勝ち取る。今日も馬場さんの戦いは続くのだ。

【pato】
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri

ロゴ・イラスト/マミヤ狂四郎(@mamiyak46

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