仕事

出世できなかった40代の会社員が今すべきこと/江上剛×大江英樹

まずは自分一人で動いてみることが何より大切

江上:僕自身、取材のためにハローワークに行って、窓口で自分の履歴書を見せたことがあるんです。そしたら、「あなたは支店長の経験があるそうですが、50代の管理職人材は、高くてまずいレストランと同じ。価値はないです」と言われて。今になればいい経験ですが、当時はショックを受けました。 大江:ショックといえば、会社を離れた途端、周囲の反応はガラッと変わりますよね。私も退職する際、付き合いのあった企業に「今後は投資セミナーをやろうと思っています」と挨拶回りをしたら、どの会社もその場では「ぜひウチでも」と言ってくれたんです。でも、その後連絡はゼロでした(笑)。 江上:会社の名刺を手放した途端、一気に無力になりますよね。
江上剛氏

江上剛氏

大江:定年後は、「起業、転職、再雇用」の順に難易度が高いと考えがちですが、実は逆だと思うんです。再雇用先で嫌な仕事をするより、起業して得意分野を仕事にするほうがよっぽどいい。起業といっても社員を抱えたりする必要はないので、まずは自分一人で動いてみることが何より大切です。 ――会社員が作家に転身するケースは珍しいですが、お二人はどういった経緯だったのでしょうか。 江上:僕は、知り合いの編集者から、「銀行をテーマにした小説を書いてみたら」と言われたのがきっかけです。確実に本を出すとの約束はない中で、「毎月原稿を持ってきて」と言われて。毎朝4時に起きて、出勤前に原稿を書く生活を1年以上続けました。 大江:つらくなかったですか? 江上:正直、「本当に本が出るかもわからないのに、俺は何をやっているんだろう」と何度も思いましたよ。でも、新しいことを始めるにはプライドは捨てないといけない。それは肝に銘じていたから、一生懸命頑張れたんだと思います。 大江:そうですよね。私も退職を通じて、個人がいかに無力かを知ったので、「今後の自分の名刺代わりにしよう」と、知り合いの出版社の企画出版で本を作ったんです。1500部刷って、半分は自分で買い取る必要があったので、費用は75万円かかりましたが、名刺代だと思えば安い。その後、本を持って、また会社員時代にお世話になった企業に挨拶に行きました。 江上:反応はどうでしたか? 大江:150社ほど回ったんですが、連絡があったのは4社だけ。でも、その4社が大量に買ってくれたのが発端で、仕事が広がり、今に繋がってます。断られるとわかってても、行動しないと広がりは生まれないと痛感しましたね。
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「貯金」より「貯人」のほうが財産になる
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