更新日:2023年03月21日 16:32
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出会い系サイトで、25000円分のスネ毛画像を送ったあの日――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第44話>

画像送信が有料だった、いにしえの出会い系サイト

 もう何年も前になるが、出会い系サイト全盛の時代、狂ったようにサクラと会話していたことがあった。  現在ではマッチングアプリなど、やや健全な出会いシステムが隆盛だが、一昔の前の出会い系サイト、それはそれは怪しいものばかりだった。エロ本などに広告が載り、やや法外な利用料金を払いぶんどるサイトが多く、早い話、ほとんどがインチキだった。  その最たるものが「サクラしかいない出会い系サイト」なのだ。  基本的にサクラとは出会えないので、出会い系サイトなのに出会えないという、中国だったら速攻で「矛盾」みたいな言葉を作り出しているに違いない状況だ。  普通にやってみたら分かることだが、けっこう法外な料金を払ってまで女性と出会おうという男性は、往々にしてコミュニケーションに難がある。下手したらいきなりセックスできるか? くらい質問するレベルなので、会話が成立しないことがままある。  ただ、それらが成立する世界があった。それが出会い系サイトのサクラだ。  出会い系サイトは基本的に男性からお金を徴収するようにできている。それこそ1メッセージ50円とか100円とか、けっこうなお金を払って男どもはメールを送る。  そうなると、業者としては男女の成り行きに任せていてもほとんど会話が弾まないので、女性側にサクラを大量投入する。このサクラたちは歩合制の給料なので、多くのメッセージを送らせるほど稼ぎが良くなる。結果、どんな話でも気遅れせずに乗ってくる女性という存在ができあがるのだ。  これは本当にすごいもので、例えば「世界を征服したい」レベルのことを男が言い出したとしても、普通なら何こいつ、と無視されるべき話なのに、「大きな夢だね」などと食いついてくる。それどころか会話を発展させてくるので「具体的にどの国から攻め落とすの」「フランス」などと訳の分からない会話が延々続く。  男はどんな話題でも相手が食いついてくるので、もしかして俺って話し上手? みたいに思うこともあり、ますますコミュニケーション不全となり、いきなりセックスできるか? と挨拶する男ができあがるのである。  そんな中で、当時の僕は本当に出会い系サイトのサクラはどこまでついてきてくれるのか、と様々なシチュエーションで試していたのだ。  実は某国のスパイとか、幕末からタイムスリップしてきた、なんじゃこの光る箱はとか、そういう突飛な設定でも彼女たちは実によくついてきてくれた。彼女たちとのやり取りの中で僕は自由だった。なんにでもなれた。そして彼女たちはそれを受け入れてくれるのだ。  ただ、あるメールを境に様子がおかしくなった。 「ねえ、写メの交換しようよ」  サクラたちはすぐに写メの交換をしたがった。それには理由があって、このサイトはメールの送信は100円分のポイントでできるが、画像の送信は500円分のポイントが必要なのだ。つまり、サクラから見て画像の方が5倍稼ぎが良いわけだ。 「まずは私の送るね~」  そういって送られてきた画像は、まあ、めちゃくちゃにかわいい。どうせどこかから拾ってきた画像だろうけど、とにかくかわいい。かわいい、かつエロい。何かを期待してしまいそうな画像だ。  こういうときはこちらも対抗して拾ってきた画像を送ることにしていた。イケメンだけどあまりイケメンすぎると疑われるので、ややイケメン度が落ちるイケメンの画像を送っていた。お前が偽の画像を送ってきたからこっちも偽だぜ、ざまあ、とおもって清々して勝ち誇っていたが、こっちは500円払っているわけで、完全に負けだ。  そんな折、ある事件が起こった。
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ただ一人だけ、本当に画像を見ていると思われるサクラがいた
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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