更新日:2023年03月21日 16:32
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出会い系サイトで、25000円分のスネ毛画像を送ったあの日――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第44話>

ただ一人だけ、本当に画像を見ていると思われるサクラがいた

 いつものように拾ってきたややイケメン度が落ちるイケメンの写真を送ろうとしたことろ、間違えて、エアマックス‘95(イエローグラデ)の画像を送ってしまったのだ。  かっこいい、買おうかなと画像をダウンロードしていたので、間違えてそれを送ってしまったのだ。  しまったなー、失敗したなー、「なんで靴?」とか返されるのかなとヤキモキしていると、サクラから意外な返事が返ってきた。 「かっこいいじゃん」  確かにエアマックス95(イエローグラデ)はかっこいい。それは異論のないところだ。ただ、反応としてはやはりおかしいのではないだろうか。普通、出会い系サイトでいきなり靴の画像が送られてきたら、そこに触れたくなるはずだ。何かがおかしい。 「ひょっとしてこいつら画像見てないんじゃないか?」  よくよく考えたら、サクラだ。相手に興味なんて持っているはずがない。さらには数をこなしていかなければならないわけだ。そうなると、いちいち「セックスできる?」などといきなり聞いてくるコミュニケーション不全なおっさんの画像など興味ない。そうなると開かないのではないだろうか。  そうと分かれば話が早い。これまではどんな話題でもついてきてくれるのか、という試みだったが、どんな画像でも気づかれないのか、みたいな試みに変化していった。色々なサクラに色々な画像を送ってみる。  黒毛和牛の写真を送ってみた。ゆったりと牧草を食べてる写真だ。 「けっこうイケメンじゃん。好みかも!」  キーボードの画像を送ってみた。 「イケメンってわけじゃないけど、私は好みかも」  キーボードのどの部分が顔に相当するのか分からない。「O」とか「P」とかのキーのあたりか。  チンポから42本の刃が出ているサイコパスが描いたみたいなイラストを送ってみた。 「けっこう渋い系だね」  見方によっては渋いのか、これ。  こいつら完全に見てないよと確信する中で、一人だけ、こいつ見てるのか? と思われるサクラに遭遇した。 「毛深い人好き!」  こう、画像を見ていないサクラからの感想はふわっとしたものが多いのに、やたら具体的な感想が返ってきたのだ。しかもこのとき送ったのはスネ毛の画像だ。これは、見てるのかもしれない。 「もうちょっと右から撮影したのも送って! ごめんね、疑い深くて!」  さらにそんな指示が飛んできた。毛深いの次は疑い深いか。  まあ、これはサクラの常套手段であった。建前上は、拾ってきた画像かもしれないと疑っているぞ、だからちょっと別の角度から撮ったやつを送ってこい、自分だからすぐ撮影できるよね、というものだったが、本音を言えばさらに画像を送らせて500円せしめたいだけだった。
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僕はスネ毛を掻き分けて肌を露出させた
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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