更新日:2023年03月21日 16:32
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出会い系サイトで、25000円分のスネ毛画像を送ったあの日――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第44話>

僕はスネ毛を掻き分けて肌を露出させた

 それでも言われた通り、ちょっと右から撮影して送る。 「うーん、もうちょっと右からの角度の方が好みかも。おねがい! もっと右から!」  見てるのか? 見てないのか? スネ毛だぞ? 右からもクソもないだろ。 「もうちょっと肌が見える感じで」  いやいやスネ毛だぞ、肌もクソもないだろ、と思いつつスネ毛を掻き分けて肌を露出させ、撮影して送った。 「右からをみたんだから左からも見たい」 「もっと接写して」  そんな指示が飛んでくる。見てるのか? いいや見えてないのか? 多分見てるのだろう、と思い始めてくると、 「つぶらな瞳だね」  とか見てないような感想が飛んでくる。やっぱ見てないんだと安心すると、 「やっぱり毛深いのすき」  と見えているような感想が飛んでくる。すっかり彼女に翻弄されて送った画像が50枚、失敗画像も入れると122枚のスネ毛画像がフォルダに並んだというわけだ。  延々と50枚のスネ毛画像を異性に送付する。時代が時代だったら何らかの罪に問われそうだ。  最終的には相手の、 「ありがとう。私本当にスネ毛フェチなんだ。いいスネ毛たくさん見れた」  のセリフにより、なんだやっぱり見てたんじゃんという結論になった。  いにしえのパソコンには様々な想いが詰まっている。みなさんも、もしそんなパソコンがあるのならば起動してみたらどうだろうか。そこには懐かしいあの人とのやり取りが残っているかもしれない。もう会えない誰かの痕跡が残っているかもしれない。そして、真っすぐに生きていた自分という痕跡を見るかもしれないのだ。そう、自分と出会うためにだ。  ちなみに僕は、サクラにスネ毛画像を50枚送るために50×500円=25000円使った自分に出会ってしまい、いたく凹んだのだった。 【pato】 テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri) ロゴ・イラスト/マミヤ狂四郎(@mamiyak46
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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