更新日:2023年04月27日 10:48
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薬物裁判で「これは本当に尿なのか?」と熱く議論。弁護士はお茶を出したASKAの事例も出してきて…<薬物裁判556日傍聴記>

体から成分が出たが、本人は摂取したことはない

イラスト/西舘亜矢子

 自室に大麻はあったようですが、それを被告は知らなかった。そんなことがあり得るのでしょうか? 裁判官はそれについて弁護人に意見を求めます。 裁判官「それでは2つの起訴状について、弁護人のご意見をうかがいます」 弁護人「被告人と同意見です」 裁判官「そうすると9月2日付の起訴状については、使用したという行為自体を争われるということですかね?」 弁護人「“不確知”です。そういうことがあったことは記憶にございません」 裁判官「被告人による摂取行為があったかどうかについての認否が知りたかったんですが、そうすると摂取行為があったかもしれないし、あったとしても認識がないということですかね?」 弁護人「ないと思います。不確知ですから!」  弁護人は何度も「不確知」という聞きなれない言葉を叫びますが、これはつまり「認識していない」という意味です。続きを見ましょう。 裁判官「あと9月30日付けの争いについて、証拠意見とあわせて詳しくお聞きしますが、被告人と同じでよろしいですかね?  7月25日の事件で、大麻である乾燥植物片97.10gが存在したこと自体は争わないということでよろしいですかね?」 弁護人「はい。今のところ証拠上は争いませんが、鑑定自体は争うものです。なんというか大麻葉(たいまよう)があったのは事実なんだけれども、大麻であったかどうかは、ちょっと……」  体から成分が出たが、本人は摂取したことはない。警察は部屋で大麻を見つけたかもしれないが、被告が所持したことはない。 ……まるで狐につままれたような話です。検察の冒頭陳述を聞くと、不可解さはさらに増します。 検察官「検察官が立証する事実は以下のとおりです。第1、被告人の身上経歴等です。被告人は浦安市で出生し、高等学校を中退しました。婚姻歴はありません。犯行時は住居地にて暮らしていました。平成25年9月17日、東京地方裁判所、立川支部において、覚せい剤取締法違反により、懲役2年、4年間の保護観察つき執行猶予に処せられ、犯行時は保護観察中です。  第2に犯行に至る経緯および犯行状況等です。まず平成28年9月2日付公訴事実についてです。犯行状況等は公訴事実に記載のとおりです。被告人は平成28年7月25日に、尿を任意提出しましたが、その尿から覚せい剤成分が検出されたため、本件犯行が発覚しました。  次に平成28年9月30日付の公訴事実についてです。被告人は平成27年11月から平成28年1月頃、勾留されている友人である熊倉和幸の自宅マンションの鍵を、前記熊倉の弁護人経由で受け取りました。その後被告人は前記熊倉のマンションを使用していました。犯行状況は公訴事実に記載のとおりです。  被告人は平成28年7月25日、前記マンションについて刑事事件で捜索を受けましたが、その際に本件大麻を発見され、大麻所持の現行犯人として逮捕されました。大麻が入っていた箱から被告人の指紋が検出されました。第3にその他情状等です。以上の事実を証明するため、証拠等関係カード記載の関係各証拠の取り調べを請求いたします」
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「人間の尿か確認できません」
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自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す

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斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中。 (https://note.com/so1saito/n/ne391a6864d0b)
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