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『鬼滅の刃』の冨岡義勇はなぜ仲間にも心を閉ざしていたのか?

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第172回 刀『鬼滅の刃』(集英社)という大ヒット漫画があります。家族を鬼に殺された主人公の竈門炭治郎が宿敵を倒し、鬼になってしまった妹を人間に戻そうとする冒険譚です。  この『鬼滅の刃』に冨岡義勇というキャラクターがいます。主人公の炭治郎が所属する組織「鬼殺隊」の一員で、最も実力のある剣士「柱」の一人でもあります。彼は同じ鬼殺隊の仲間と打ち解けようとせず、他の柱からも顰蹙を買っていました。  鬼の首領である鬼舞辻無惨との決戦に備え、柱による合同強化訓練を行うことになった時も、彼だけは「俺には関係ない」と参加を拒み、その理由も話そうとしませんでした。しかし空気を読まずにしつこく尋ねてくる炭治郎に根負けして、しぶしぶ自分の事情を打ち明けます。  義勇は鬼殺隊に入るための最終戦別で、鬼を一人も倒せずにただ助けられただけで合格したこと、そして自分を助けた錆兎が死んでしまったことに後ろめたさを感じていました。「俺には関係ない」という発言は、「俺はお前たちと違って特別だ」という意味ではなく、「自分には柱の資格がない」というニュアンスだったのです。  この思い込みから義勇を解放をしたのは炭治郎です。炭治郎は「何も知らない俺がとやかく言えることじゃない」と考えつつ、「義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」と問いかけます。この問いかけをきっかけに、義勇は錆兎とのやりとりを思い出します。  義勇には姉を鬼に殺された過去がありました。そのことについて「自分が死ねば良かった」と悔やむ彼に、生前の錆兎は「自分が死ねば良かったなんて二度と言うなよ」と叱咤していました。  義勇はこのやりとりを思い出したことで、錆兎の死に対しても、姉の時と同じように「自分が死ねば良かった」と考えていることに気づいたのです。こうして義勇は前向きになり、訓練に参加することを決心します。  考え方や行動は「何を覚えているか、何を思い出すか」で決まります。しかし、私たちは悲しみが強すぎて、後悔が強すぎて、それ以外の出来事を思い出せなくなることがあります。それが「呪縛」という人物の影響です。  この呪縛から自力で抜け出すのは不可能です。義勇に対する炭治郎のように、誰かの言葉をきっかけにして思い出すしかありません。人は誰しも「一人では思い出せない記憶」があり、「誰かに救われるしかない部分」を抱えています。
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「そういえば」で思い出す
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