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『鬼滅の刃』の悪役・鬼舞辻無惨はなぜ小物臭が漂うのか?

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第170回 刀『鬼滅の刃』(集英社)という大ヒット漫画があります。家族を鬼に殺された主人公の竈門炭治郎が宿敵を倒し、鬼になってしまった妹を人間に戻すために旅に出る冒険譚です。  この『鬼滅の刃』に、鬼舞辻無惨というキャラクターがいます。無惨は炭治郎の家族を殺した張本人であり、物語のラスボス的存在です。彼は多くの人間から憎まれるだけでなく、自分の配下の鬼から恐れられています。彼にとって他の鬼は、自分の目的を達成するための道具にすぎないからです。  無惨には「十二鬼月」という12人の幹部がいました。しかしそのうちの4人を「役に立たないから」という理由で粛清します。その時のやりとりは無惨の言葉を肯定しても否定しても殺されるという横暴そのもので、「鬼舞辻無惨」でグーグル検索すると「パワハラ会議」がサジェスト表示されるほど話題になりました。  鬼は人間よりも長い寿命と強い身体を持っていますが、「日の光を浴びると消滅する」という弱点があります。無惨の目的はその弱点を克服することです。そのために千年以上活動しており、その方法が判明した時も、「この為に千年増やしたくもない同類を増やし続けたのだ」と言い切っています。 「何が善で、何が悪か」という線引きは困難ですが、自分の目的のために誰かを犠牲にする人間が悪人に見えるのは確かです。そして、そういう人間は基本的に小物臭が漂います。  鬼殺隊を全滅させるために本拠地に乗り込んだ無惨は、「誰も彼も役には立たなかった。鬼狩りは今夜潰す。私がこれから皆殺しにする」と誰も頼りにしないことを宣言します。しかし、その直後に誤情報を知らせた配下の鬼に対して「何をしている鳴女!!」と激昂します。ここまで来ると悪を通り越してほとんどギャグですが、そうなるのは「悪」と「小物」が紙一重だからです。  自分の都合ばかり考えていると、その場その場で言うことが二転三転するので滑稽に見えてきます。自分の都合のために誰かを犠牲にする悪党でも、天下国家を語り、敵味方を問わず強者には敬意を表するようなキャラクターであれば、小物には見えません。しかし、無惨の場合は「太陽を克服する」という自分の生存が目的なので、そうした大きなスケールになりえません。  このように「大物」と「小物」の違いは、実力や地位や資金力ではなく、「心を通わせている人間の数」で決まります。主人公の炭治郎は、無惨とは対照的に描かれています。無惨が自分の配下ですら道具でしかないのに対して、炭治郎は敵である鬼にすら同情します。力があるのは無惨かもしれませんが、「人の器」を論じれば、炭治郎の方がよほど大物です。
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「物」にフォーカスするか、「人」にフォーカスするか
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