心の安定というのは、家族関係、友人関係、恋愛関係、仕事関係といった複数の人間関係の間で、適切な距離を取ることで成立します。家庭ばかりに偏れば、引きこもりになって問題になります。恋人ばかりに偏れば、ストーカーになって問題になります。仕事ばかりに偏れば、ワーカホリックになって問題になります。大切なのはバランスです。 　このように心は人と人との結びつきでできています。だからこそ勇気や自信、悲しみや恐怖を観念的にコントロールすることはできません。「自分はできる」といくら言い聞かせても自信は生まれませんし、「怖くない」といくら言い聞かせても恐怖は消えません。すべての心情は、「人物の影響」を含めて考える必要があるのです。そして、その自分の心情を自覚した時、人は納得した決断ができるようになります。 　物語の「火の魔法で相手を焼く」「ビルの10階までジャンプする」といった物理的な部分には嘘があります。しかし、ワンピースの「なぜ海賊王になるのか」や、キングダムの「なぜ天下の大将軍になるのか」といった心理的な部分には嘘がありません。心理描写に無理があれば、私たちはその物語に共感できないからです。 「あの時、あのキャラクターの、あの発言の影響で、このキャラクターはこういう行動を取るようになっている」といった風に人物の影響を追いかけていると、物語に一層感情移入できるようになりますし、自分が似たような問題で悩んだ時の判断材料の一つになってくれます。ぜひソフィアとカタリナの関係に注目して、『はめふら』を読んでみてください。きっと新しい発見があるはずです。 コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』（扶桑社）が発売中