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『鬼滅の刃』の主要キャラクターはなぜ死ぬのか? 読者の心を揺さぶる仕組みとは

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第187回 刀 先日完結した『鬼滅の刃』(集英社)には、繰り返し表現されているテーマがあります。それが「継承」です。死にゆく者が想いを託し、残された者がその想いを受け継ぐ。このやりとりが無限列車編、遊郭編、刀鍛冶の里編、そして鬼舞辻無惨との最終決戦といった各エピソードを通して、何度も描かれています。  ただ、そのすべてを列挙していると膨大な量になってしまいます。そこで鬼滅読者ならば誰でも「あの時か」と思い出せる印象的な場面を3つあげると、「無限列車編の煉獄杏寿郎」「刀鍛冶の里編の時透無一郎」「柱稽古編の冨岡義勇」です。  まず一つ目の無限列車編。鬼殺隊のリーダー格の一人、炎柱の煉獄杏寿郎は炭治郎を強敵からかばって命を落とします。この時、杏寿郎は炭治郎に「もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱になるのだ」と想いを託します。  後日、炭治郎は杏寿郎の実家を訪れ、杏寿郎が家族に残した遺言を伝えます。この時、炭治郎は杏寿郎の弟に「強い柱に必ずなります」と約束します。つまり、杏寿郎と炭治郎の間で、柱になることが継承されているのです。  次に刀鍛冶の里編。霞柱の時透無一郎はもともと他人に対する思いやりのない性格でした。刀鍛冶に対して、「刀鍛冶は戦えない。人の命を救えない。武器を作るしか能がない」と言い放ち、力づくで自分の稽古を手伝わせようとしていました。  それが亡くなった自分の父と兄の言葉を思い出したことで、思いやりのある性格に変わります。刀鍛冶に対して、「俺のために刀を作ってくれてありがとう。鉄穴森さん」と感謝し、その言葉を思い出すきっかけをくれた炭治郎に対しても、「君のお陰で大切なものを取り戻した」と感謝します。  無一郎の父親は利他的な性格でした。生前の彼は「人のためにすることは巡り巡って自分のためになる」「人は自分ではない誰かのために信じられないような力を発揮できる」と話していました。また兄は鬼に襲われて命を落とす間際に、「無一郎の無は、『無限』の『無』なんだ。お前は自分ではない誰かのために無限の力を出せる選ばれた人間なんだ」と遺言を残します。  この言葉を思い出したことで、無一郎は「誰かのため」という利他の発想を父と兄から継承します。その結果、誰かが自分のためにしてくれた利他の行動に対して、感謝できるようになったのです。  最後は柱稽古編です。水柱の冨岡義勇はもともと鬼殺隊の活動に消極的で、鬼舞辻無惨との最終決戦に備えた柱による稽古会も一人だけ開かずにいました。また、柱同士で行う会議にも参加しようとせず、周囲と打ち解けずにいました。  それが亡くなった自分の姉と、鬼殺隊になるための最終選抜で友人になった錆兎の振る舞いを思い出したことで、隊士に稽古をつけるようになります。義勇の姉は鬼に襲われた時に、義勇をかばって命を落としています。また錆兎も最終選抜で義勇を鬼から助けた後、別の鬼に殺されています。  このことを思い出した義勇は、「自分の命を犠牲にして、誰かの命を守ること」という姉と錆兎の遺志を継承します。鬼から人々を守るためにある鬼殺隊で他の隊士に稽古をつけるようになったのは、その結果です。このように鬼滅の刃では、「死にゆく者が想いを託し、残された者が想いを受け継ぐ」という継承が繰り返されています。
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残された者は遺志を継ぐ
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