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アルピニスト・野口健が緊急提言!尖閣諸島を守る切り札

中国が激しく反発をするようになったのは国有化の後

尖閣諸島――尖閣諸島を巡っては’10年の中国漁船衝突事件の発生後、中国公船が領海侵入を繰り返し、日本の実効支配を覆そうとしてきた――。その後、’12年に石原慎太郎東京都知事(当時)が尖閣諸島の都購入を決めたが、民主党・野田政権が国有化に踏み切り、今に至る。 野口:石原元都知事が尖閣の都購入を秘密裡に進めていた頃、先発隊として尖閣への上陸を打診されました。そこで、尖閣にプレハブを建てて、生物学者が調査を行うベースキャンプをつくるよう提案したんです。  ところが、尖閣国有化でこの話は流れた……。  都が尖閣を購入・保有していれば、日本政府は「石原さんという変わった人がやったこと」と、一地方自治体の勝手な振る舞いと中国にエクスキューズできたんです。クレバーなやり方だし、もちろん石原さんはそれを狙っていた。実際、中国が激しく反発をするようになったのは、国有化の後です。国vs.国の構図をつくった民主党政権の判断は、明らかに間違っていた。

尖閣こそ沖縄の世界遺産認定に不可欠なピース

――日本固有の領土である尖閣諸島を守る「切り札」はあるのか? 野口:’12年に都が尖閣を購入するため基金を募ると、瞬く間に10億円以上が集まったが、今も宙に浮いたままなので、国が尖閣を払い下げて都が買えばいい。そして、石原都知事が当時言っていたように、港やヘリポート、研究施設などを整備し、環境を調査する学者を常駐させる。  石原さんは尖閣に大規模な施設をつくるのではなく、固有の生態系を守るための自然保護を目指し、ごく少人数が短時間だけ上陸できるエコツーリズムも構想していた。実際、東京の小笠原諸島を世界自然遺産にするため、石原都知事はガラパゴスを訪れている。尖閣に学者が留まり調査研究を行い、小笠原諸島で自然保護活動の経験を積んだ東京都レンジャーも駐在する……そんな構想を描いていたのです。この方法なら、環境保護活動と同時に、尖閣へのコミットを強めることができます。  今、沖縄県が世界自然遺産にしようという動きがあるが、尖閣も含めればなおいい。環境省にそう話したら及び腰で、「尖閣を含めると、世界遺産の話自体が止まってしまう」と言う……。でも、尖閣こそ、沖縄の世界遺産認定に不可欠なピースなのです。  世界自然遺産に認められるには、そこにしかない固有の生態系がなければいけない。実際、小笠原諸島が認定されたのはクジラでもイルカでもなく、固有種である小さなカタツムリのカタマイマイがいたからだった。だから本来は、多くの固有種が生息する尖閣を含めて、沖縄を世界自然遺産に申請するべきなのです。ところが、もっとも危機感を抱くべき沖縄県の中国に対する姿勢が曖昧で、県は尖閣に触れたくない……。孤軍奮闘しているのは、尖閣がある石垣市の中山義隆市長くらいです。  尖閣を含めた沖縄が世界遺産になったら、日本のコミットはより強まるのですが……。  領土問題での対立を巧みに避けながら、尖閣の実効支配を強化する――戦略的な“野口プラン”の実現が待たれる。
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デジタル博物館で中国領土と世界発信
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