却って危険!中国の「高層マンション火災避難マニュアル」
不動産バブル崩壊の足音などどこ吹く風とばかりに、中国全土で止まるところを知らない高層マンションの建設ラッシュ。その陰では、耐久性や耐震強度を犠牲にした「おから工事」も社会問題となっている。しかし、入居者の安全を脅かしているのは、おから工事だけではない。中国で優良物件とされる高層マンションに住む日本人によると、日本では消防法で設置が義務付けられている、火災避難設備が全くないというのだ……。
「日本の集合住宅では、火災に備え、ベランダは蹴破ることができる隔て板を挟んで隣とつながっているし、そうでない場合にも下の階に縄梯子で降りることができる避難ハッチなどが取り付けられていますよね。でも私の住んでる22階のベランダは、隣ともつながっておらず避難ハッチもない。火事になったら終わりですよ。今まで中国で3回引っ越したけど、どの部屋にも避難設備はなかった」(広州市の高層マンションに入居する日本駐在員の妻)
この証言を受け、筆者は深セン市内のある高層マンションを独自に取材したところ、やはり各部屋のベランダは独立しており、非常時にも隣のベランダには避難できない設計となっている。下階のベランダに脱出するための避難ハッチも設置されていなかった。
そこでこのマンションの管理会社に、火災時の避難方法について尋ねてみた。しかし、「マンション正門に張り出してある避難マニュアルを確認してください」との返事が返ってくるばかりだった。その避難マニュアルというのがこれだ。
⇒【画像】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=174289
火災時には、なんと自力でカーテンなどで縄を編んで脱出しろというのだ。絵の下には「待つな頼るな」という突き放すような文言も見える。ちなみにこのマンションは25階建てである。さすが中国雑技団を生んだお国柄。これくらいの妙技は、朝飯前なのだろうか……。
万が一、縄になるような材料がない場合は、配管を伝って脱出することも指示されている。繰り返すがこのマンションは25階建て。そもそも老人や体の不自由な人には不可能である。
⇒【画像】はこちら https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=174290
そして、どうしても戸外に出る手段を断たれた場合の最終手段がこれ。風呂場に避難して湯船に水を張り、救助を待てというのだ。ちなみにこのマンションをはじめ、多くの中国の家庭には、湯船はないのだが……。
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2010年11月には、上海市静安区で28階建て高層マンションで火災が発生し、日本人を含む58人もの犠牲者を出したことも記憶に新しい。それでも依然、火災避難設備の不備がまかり通る理由について、中国広東省で不動産会社を経営する日本人男性はこう話す。
「隣の部屋に簡単に移動できるマンションなんてだれも住みたがりませよ。中国ではビル火災に巻き込まれて死ぬ確率よりも強盗に襲われて殺される可能性のほうがよっぽど高いですから。防犯上の観点から、ベランダは独立していて避難ハッチも設置されていないんです」
避難経路の不備は、火災で死ぬか強盗に殺されるか、究極の選択の結果ということか。
【取材・文・写真/ドラゴンガジェット編集部】
ガジェット好きのライターや編集者、中国在住のジャーナリストが中心メンバーとなり、2012年1月から活動を開始。東京と深セン、広州を拠点に、最新の話題をお届けする。
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