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コロナ自粛で国民は多くを失った/倉山満

東京都医師会・尾﨑会長が「医療総力戦だ」と言い出した。世間の風向きの変化を読んだか?

 確かに、コロナ禍の初動において、当時の安倍晋三内閣のなした所業と不作為は、批判されてしかるべきだ。当時の安倍内閣は検察人事に熱中し、コロナ対策を後回しにした。習近平訪日と東京オリンピックを控え、コロナを大仰にしないようにした。だから春節に際して、武漢も含めた中国からの観光客が大量に押し寄せた。そして、コロナウイルスを日本中にバラまいた。これは、いかなる安倍信者も、弁護しようがない。世界一早く武漢の状況を察知して国を封鎖した台湾を羨ましがっても仕方がないが、もし初動においてもう少しマシな対応をしていれば、日本はこれほどのコロナ禍に苦しめられることはなかったかもしれない。  では、どのような苦しみか。  確かに最初は未知の感染症だった。政府は助言者である医師たちに言われるがままに、「ペストやエボラ出血熱のように危険な伝染病かもしれない」との仮説で、国家経済そのものを止めた。

国民の自粛にも限界がある

 マスクをしろ、外出するな、飯を食うな……政府を通じた医者たちの要求は、エスカレートしていく。  疑念を呈した人はいた。「政府の助言者の医師たちは、患者を減らせ、現場の医療は崩壊寸前と言う。しかし、ゼロコロナなど不可能であり、国民の自粛にも限界がある以上、医療体制を構築するしかないではないか」と。これに対し医師会は、特に東京都医師会会長尾﨑治夫は「医者は簡単に増やせない」と事あるごとに絶叫していた。  ところが、最近は潮目が変わった。その尾﨑会長が「医療総力戦だ。すべての医師がコロナに立ち向かおう」と言い出した。世間の風向きの変化を読んだか。本欄でも再三再四提言してきたのが「大木隆生コロナ担当大臣」による日本救国だが、尾﨑発言は大木提言そのものである。国民の怒り、「大木大臣」による大木提言の実現を望む、声なき声を感じ取ったか。
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国民は多くを失った
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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