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日米首脳会談。「ヨシ」「ジョー」の関係でも気がかりな菅首相の存在感の薄さ

今後の日中関係悪化は必至か

 単なるアピールではなく、日本の外交政策をかたちにした点も評価できるという。横江氏が続ける。 「今回の共同宣言に盛り込まれた『自由で開かれたインド太平洋』は、第一次政権時代の’07年に安倍首相が唱えた『自由で繁栄するインド太平洋』という外交用語に準じて、第二次政権で提唱した戦略。中国の経済的台頭を意識して、インドやオーストラリアなどとの戦略的協力関係の構築を目指しましたが、’15年に突如オーストラリアの首相が交代して親中路線になったため、半ば頓挫していました。  それがコロナ禍を経てオーストラリアが反中外交に転換し、さらに今回の声明。つまり、菅首相は日本発のグローバルな対中外交戦略を結実させようとしているのです」  とはいえ、今後の日中関係悪化は必至。日本の経済的ダメージは避けられないとの見方が浮上している。 「日本には人権侵害を根拠とする制裁規定がないため、現状では対中制裁に動く可能性は低く、中国による報復制裁も考えにくい。しかし、ウイグル族に対する人権侵害に反対を表明した外国企業が中国の検索サイト上に表示されなくなるなど、陰に陽に嫌がらせを受けています。  今後、強制労働に関与した中国企業との取引を停止した日本企業にまで対象が広がるのは避けられません。政官財ともに中国との関係見直しを迫られるでしょう。その点で、今回の首脳会談が日本の対中政策の分水嶺になったとも言えます」(古森氏)

現地記者は共同会見で首脳会談の内容をスルー

 先行き不安を駆り立てる会談とも言えそうだが、もう一つ気がかりな点が……。菅首相の存在感の薄さだ。 「共同会見では現地の記者と日本人記者が2人ずつ質問したのですが、1人目の現地記者は4月15日にインディアナ州で起きた銃乱射事件についてバイデン大統領に質問し、2人目はイランが高濃縮ウランの製造を表明したことについての質問でした。日本には興味がないとばかりに、首脳会談とは関係のない質問しかしなかったのです。  2人目は菅首相に『コロナの感染拡大が抑制できていないなかでの五輪開催は無責任ではないか?』という質問もしたのですが、菅首相は質問を聞き逃したのか、何も答えずに日本人記者の質問を促す場面が見られた。発言はすべてペーパーを読み上げるかたちだし、バイデン大統領と比して格落ち感が際立つ会見でした」(全国紙政治部記者)  不安とともに課題の残る首脳会談だったようで……。
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日米共同声明の注目ポイント
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