内閣官房モニタリング検査では北海道、宮城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県、沖縄県で街頭PCR検査が行われています。この調査では、様々な興味深いデータが公開されています。
内閣官房モニタリング検査では「陽性疑い」と称していますが、PCR法では原理的に「陽性」か「陰性」しか存在しませんので
世界唯一の検査抑制主義の論拠となっている国策エセ科学・エセ医療デマゴギーにあわせるために創作した「陽性疑い」という官僚創作単語を本稿では使いません(医療検査でないことを強調するために「陽性疑い」と称しているともされるが、有害無益である)。
内閣官房モニタリング検査14都道府県検査数
2021/09/30公開(最終週は暫定値) 出典:内閣官房、データcsv
内閣官房モニタリング検査の調査地は、14都道府県ですが、実際には首都圏、特に東京都に偏重しています。事業が本格化した5月下旬以降、全体の検査件数は2万検査/週から6万検査/週の範囲ですが、東京都が1万〜2万検査/週を占めており、残りが13道府県です。東京都では、独自のモニタリング検査が内閣官房の約二倍の規模で行われており、事業としてのデータの共有は行われていないようです。
結果として13道府県では、検査規模が東京都と比較して1〜2桁小さい500〜6000検査/週となっており、後に指摘する統計の大きな欠陥の原因となっています。
内閣官房モニタリング検査14都道府県別検査陽性者数
2021/09/30公開(最終週は暫定値)出典:内閣官房、データcsv
次に14都道府県毎の検査陽性者数を積み上げ棒グラフにしました。やはり東京都が多くを占めています。これは単に東京都の検査規模が大きいためです。第4波でエピセンターとなった大阪府が4月26日の週に目立ちます。これは緊急事態宣言入り直後にモニタリング検査の実施を知った市民が集まったためと思われます。
8月から9月にかけて千葉県で、9月に愛知県で陽性者数が目立って増えています。これは次の14都道府県毎の検査陽性率を見る必要があります。
内閣官房モニタリング検査14都道府県別検査陽性者数(片対数)
2021/09/30公開(最終週は暫定値) 出典:内閣官房、データcsv
14都道府県における検査陽性率を片対数プロットしたものを見ましょう。単位は‰(パーミル:1/1000のこと)であり、日毎新規感染者数より大きな数字となっていますが、これは日々の新規感染者ではなく市中に存在する感染者を見ていますので問題はありません。ウイルスに接触して感染の成立した人は、接触日(曝露日)から起算して平均15日間はウイルスを体外に排出します。また感染能力はありません*が、20日間から数ヶ月にわたりウイルスを体内に持ち続けることもあります。従って、市中感染者をランダムサンプリングすると日毎新規感染者数の積分を出すことになります。
<*あくまで科学者間での非公式な会話などであるが、電子顕微鏡などで観測するとスパイクの変形などウイルスの形が変わっている様だとのことで、人間の免疫による攻撃でウイルスの感染に関わる性質が消失しているのではないかという話がある。このため合衆国疾病予防管理センター(CDC)は、治療結果の診断にはPCR検査などの核酸増幅法でなく抗原検査を用いることを推奨している。参照:
Overview of Testing for SARS-CoV-2 (COVID-19)2021/08/02更新 CDC>
各都道府県の検査陽性率は、第4波と第5波では1〜5‰の間にあり、波の間では0.1‰の桁にあります。Surgeの発生中と小康期では有意差があるようです。
ここで目につくのは8月中の千葉県で、2回にわたって10‰=1%以上の高い検査陽性率を示していました。千葉県の日毎新規感染者数統計と照合すると、日毎新規感染者数に千葉県に特有な異常は見られないため、これはたまたま陽性を示す人がまとまって現れたためと思われます。成田空港と観光地がある千葉県は、モニタリング検査がこの期間、500〜1000検査/週しかありませんでしたので17人程度の陽性者で陽性率が大きく変動します。
検査集団が小さすぎるためにサンプルの僅かな偏りで統計が大きく変動してしまうのです。
次に年代別の統計を見てみましょう。報道では、「お年寄りは、陽性率が低い。若者はだらしないので陽性率が高い。けしからん」というものが見られましたが、事実はどうでしょうか。
内閣官房モニタリング検査年代別検査数
2021/09/30公開(最終週は暫定値) 出典:内閣官房、データcsv
内閣官房モニタリング検査年代別検査に占める割合
2021/09/30公開(最終週は暫定値) 出典:内閣官房、データcsv
モニタリング検査の参加者は、20代がたいへん多く、次いで40代、50代、30代と続き、10代以下、60代、70代以上となっています。70代以上の方は、ケアホームやデイケアなどで組織的な検査をする機会がありますし、そもそも街へ出歩く機会も減ります。60代は定年以降の社会的活動性が減少します。
20代と10代以下は、大学や各種学校での組織参加がありますのでそういった機会を活用したり、街に出かけた際に立ち寄る機会も多いものと考えられます。筆者は、高校卒業以降の若者の寄与が大きいのではないかと考えています。少なくともモニタリング検査からは、若者が無関心という事はないと言えます。
もう一つ気になるのは、「年齢不明」がたいへんに多いことです。第31週では5万検査の内1万6千検査(約30%)が不明です。既に最大勢力が「不明」であり、折角の調査ですからこれは解消すべきです。
内閣官房モニタリング検査年代別陽性率(‰、線形)
2021/09/30公開(最終週は暫定値) 出典:内閣官房、データcsv
内閣官房モニタリング検査年代別陽性率(‰,片対数)
2021/09/30公開(最終週は暫定値) 出典:内閣官房、データcsv
次に
年代別検査陽性率です。これは同じデータを線形と片対数の表記で二枚のグラフにしました。初期のモニタリング検査は検査集団が小さすぎるので評価不能です。
ほぼ一貫して
10代以下と20代の検査陽性率が突出して高いです。これらの世代は欠測しない限りだいたい1〜10‰の範囲の陽性率であり、他の世代が概ね2‰以下で、1‰未満の値をとることが多い事と比較すると際立って陽性率が高いです。
大学生がその典型ですが、この世代は社会の中での活動性がたいへんに活発で、しかも学校や職場、バイト先、サークル活動や交際などで様々な社会的立場の不特定多数の人と接触します。結果としてウイルスの運び屋になってしまうことは火を見るより明らかなことです。
また感染防止の有効性は期待されたほど高くはないですが、
ワクチン接種が後回しにされてきたこともあります。
筆者は、若者がCOVID-19に対して無関心であるという風聞は誤りであると考えますが、
20代以下の感染率は有意に高く、対面授業に異常な執着をするというこれまた世界にも珍しい異常な行政を行う文部科学省の責任は極めて大きいです。また若い方は、ウレタンマスクというマスクの形をした装飾品を好む傾向にありますが、
全く何の役にも立ちませんので不織布マスクに切り替えてください。
70歳以上については、検査数が精々500件/週程度に留まっており、例えば7/26の週は5‰を示していますがこれは190検査中陽性者1名です。この程度のサンプル数では評価には使えません。