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「国民の健康を管理する」厚労省の余計なお世話

がん対策推進基本計画,厚労省,健康 6月8日、「がん対策推進基本計画」が閣議決定された。これまでも「健康を害する」としてさまざまな規制を受けてきたタバコには「’22年までの今後10年間で12%にする」という喫煙率の目標値が初めて掲げられ、その規制を強めている。  一方、この基本計画は「ハイリスク飲酒者の減少」「運動習慣者の増加」「野菜と果物の摂取量の増加」「塩分摂取量の減少」など、喫煙以外の分野にも目標を設定。「健康」の名の下に、飲酒や食生活まで国家に管理される時代への突入を匂わせている。  もちろん、これまでのところ最大のターゲットとなっているのがタバコなのは言うまでもない。政府は’11年末、禁煙政策に熱心な小宮山洋子・厚生労働大臣の主導で、労働者の受動喫煙を防ぐためと称して、飲食店も含めた職場の全面禁煙を義務化する労働安全衛生法改正案を国会に提出した。  しかし与野党内から反発を受け、今年5月に提出された修正案で全面禁煙義務は撤回。事実上、骨抜きにされたわけだが、禁煙を筆頭とした健康強制社会の流れは、もはやとどまるところを知らない。 ◆小規模飲食店を直撃する受動喫煙防止条例  自治体レベルでは、’10年に全国で初めて病院や学校、劇場、官公庁などを原則禁煙化した神奈川県の「受動喫煙防止条例」は記憶に新しい。  当初の条例案には全面的な禁煙・分煙の義務化が盛り込まれていたが、居酒屋など愛煙家が多く集まる店や、経済的にも物理的にも分煙設備を設置しにくい小規模なバーや喫茶店にとっては死活問題。「客足を遠のかせてしまう」との反発が相次ぎ、100平方メートル以下の店舗については禁煙や分煙の義務化は見送られた。しかし、それでも条例の影響は小さくない。  横浜市内でバー「C」を営む店主は現状をこう話す。 「条例制定後、店に入ってきた途端、“禁煙じゃないのか”と嫌な顔をして店を出ていく客が増えました。ウチみたいな店はタバコ好きの客も多いから、喫煙可は当たり前。店の構えを見ればそんなことは想像できるだろうに、喫煙可の店をことさらに毛嫌いしてみせるような空気が蔓延しています」  喫煙者ばかりか、喫煙可としている店までもが、肩身の狭い思いを強いられているようだ。  また兵庫県では、全国2例目となる受動喫煙防止条例が’12年3月に可決、成立。神奈川県と同様に100㎡以下の小規模飲食店は禁煙・分煙の義務化を免れたが、新たな問題が発生しているという。 「小規模店舗には、喫煙・分煙・禁煙などといったステッカーの掲示が義務付けられました。ところが、喫煙可を示すステッカーのデザインを、ドクロマークみたいなネガティブなイメージのものにしようと、嫌煙活動家たちが県に圧力をかけている気配がある。組合加盟の飲食店では2〜3年前から、喫煙可や分煙といったステッカー表示を自主的に取り入れている。それを使えば済む話なのに、県はわざわざ無駄なカネを使って新たなステッカーを作らせようとしています」(兵庫県飲食業生活衛生同業組合理事長・入江眞弘氏) ― 厚労省が推進する[健康全体主義]の恐怖【1】 ―
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