ある殺人事件が生み出した“地元住民の亀裂”
◆実態とかけ離れた報道が地元住民を不安にさせ、いまなお遺恨を残す
「マスコミは何を調べてあんなことを言っとるんですか。人間ができとる? 頭がいい? まるっきり違う。警察や教委はよくマスコミをあれだけコントロールしたな、と近所では失笑してますよ」(犯人の少年の自宅近くの住民)
三重県朝日町で昨年8月、花火大会に行った女子中学生(15歳)が帰宅途中に殺害された事件は今年3月、犯人が現場近くに住む高校を卒業したばかりの少年(18歳)とわかると、「クラスでも人気があった」「優しくてまじめ」といった同級生の声が報道されたが、この「犯人は優等生報道」が引き金となり、住民は疑心暗鬼に陥り、深い溝ができたという。
「あの家はお爺さんは窃盗癖があったり、物音がうるさいと怒鳴り込んできたり。お父さんは人に会っても挨拶一つしない。少年も睨みつけるようにしてジロジロ見るタイプで、近所での評判はよくありませんでした。ここらの家は玄関口だけでもどの家か特定できるので、火でもつけられるんじゃないかと恐れて取材には何も喋れなかった。だから取材に何を答えた、誰が何を言ったかとみんな疑心暗鬼になってしまったんです」
事件後、少年の両親と妹2人は夜逃げ同然に大阪へ転居。祖父と祖母だけが残り、「謝罪文」を回覧板で回したという。
「回覧板で謝罪ですよ。もう誰も相手にしませんね。触らぬ神にたたりなしですよ」(近所住民)
また、警察はローラー作戦で地域住民のアリバイを確認していたが、この捜査によって住民が警察に強い不信感をつのらせることになってしまった。「事件の日、誰とデートして、どこのホテルに泊まったかまで聞かれた」(町内の20代女性)とプライバシーまで丸裸にされ、住民たちは知られたくもない事情を暴露させられることとなったのである。“腫れ物一家”が近隣住民に残したしこりは大きく、怒りも収まらないままなのだ。
取材・文/SPA!裏読み特捜班

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