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普通の女の子が「性を商品化する」ことの意味――鈴木涼美×峰なゆかによるAV女優論vol.4

漫画家・峰なゆか

「もっと男も女もどんどん消費しあえばいいんですよ!」(峰)

「日経新聞記者はAV女優だった!70本以上出演で父は有名哲学者」。『週刊文春』にこのような記事が掲載されたのが14年10月のこと。スッパ抜かれた(?)のは「『AV女優』の社会学」(青土社)で注目を集めた社会学者・鈴木涼美さん。11月末には「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を上梓したばかりだ。

 新刊の発売を記念して、報道直後に週刊SPA!で3回に亘って掲載された漫画家・峰なゆか(『アラサーちゃん 無修正』『セクシー女優ちゃん ギリギリモザイク』)との対談を完全版で公開! 女は本当に「身体を売ったらサヨウナラ」なのか? 性を商品化することの中毒性について徹底したフィールドワークを基に考察し高い評価を得た鈴木涼美。アラサー女性の恋愛とSEXの本音を描いた漫画で共感を呼ぶ峰なゆか。AV女優というキャリアを経て執筆業で活躍する二人が「性を商品化すること」の意味を改めて考える。

⇒【vol.3】https://nikkan-spa.jp/760445

――ともにアラサーのお二人が女子高生だった90年代後半は、援助交際、ブルセラの全盛期。普通の女の子が「性を商品化する」ことへのハードルが一気に低くなった時代でもありましたが、お二人の高校生時代のお話を振り返ってうかがえれば。

峰:鈴木さんは高校時代、ギャルだったんですか?

鈴木:ギャルといっても私はパギャルで。あ、浜田ブリトニーさんの漫画のタイトルで“中途半端なギャル”っていう意味です(笑)。パラパラも10曲くらいしか踊れなかったし。家が遠くて、クラブのイベントも「終電あるんで」って帰ってました。だから渋谷でギャルを謳歌している子たちの周辺にいたって感じです。峰さんの高校時代はどんな感じでした?

峰:私の地元は岐阜なので、ギャルなんていませんでしたよ。いるのはヤンキーだけ。地元の情報誌に『さるぼぼ通信』っていうのがあって、それのファッションスナップに出るのが自慢!っていう。あとはヒップホップみたいなB系とかですかね。

鈴木:当時は今よりも◯◯系っていうキャラクターが、アイデンティティとして強くありましたよね。女の子だとギャル系、キューティ系、ノンノ系みたいな。

峰:ありました! みんなコスプレみたいな格好してましたよね。休みの日も制服着てたし。

鈴木:私もブルセラでパンツ売ってたので、必然的に制服は休みの日でも着てました。でも、今の20歳くらいの子に「高校時代は何系だったの?」って聞いても、そういうのない感じみたい。

峰:鈴木さんはギャル系にいながらも、勉強が好きだったんですか?

鈴木:というか、顔を使い分けるのが好きなんですよ。高校時代もイベントで知り合った男とバコバコやりながら、予備校では真面目そうな男の子に処女のフリして手紙渡したり。私、1位になれるものが昔からなくて。慶應を首席で卒業できたわけでもないし、人気AV女優だったわけでもない。だから何かひとつ一番になれるものがあれば別なんですけど、私の場合は抱き合わせ商法っていうか。いろんな顔を持っていれば、トップじゃなくても自分的な逃げ道があるかなって。

峰:逃げ道を作るっていうのは私もよくわかります。漫画を読んだ人に絵が下手とか言われても、「私そんなバリバリの漫画家じゃないんで!」って。逆に、今の単体(女優)の超かわいいAV女優と並べられてブサイクって言われても、「私、漫画家なんで! 女性の漫画家と並べてもらえば美人って言われても遜色ないと思うんですけど!」っていう。逃げるの最高ですよ!(単体女優=特定のメーカーと本数契約を結び、デビューが決まると大々的に売りだされるAV女優のエリートコース)

鈴木:私は男性に対しても、知的な女の子が好きそうな男にはバリバリ東大をアピールしますからね。例えば、ホストクラブで、知的キャラのお気に入りホストがいたとしたら、全然読んでないのにマックス・ウェーバーの本とか出して、「明日までにこれ読まないと……」とか言って。

峰:私、ホストはまずタイプとしてダメなんですよね。あれが好きってむしろ特殊じゃないですか?

鈴木:特殊ですね(笑)。でも私はあれしか好きになれないんです。高校時代がカスいギャルだったんで、イケてる感じに弱いんですよね。女のためにカスタマイズしているのが超楽しくて。私は間にブランクはあるものの、10年前からホスト狂いなんで、AVの稼ぎも日経の給料も等しくホストに使っていました。

峰:たとえば普通っぽい男の子がホストになったとしても、そういう男が好きな女はわざわざ普通っぽい男と話すのにお金出さないし、お金出せるような仕事してないですもんね。結局お金を持っている風俗嬢とかが好きなタイプの男ってなると、今のホストみたいなパターンになるんですよね。

鈴木:でも男の商品化って高いじゃないですか。ホストクラブだと一晩で10万とか普通だし。

峰:男を商品として利用する女が圧倒的に少ないですからね。私、最近ジムに入会したんですよ。そこは女性限定で、大学生くらいの若い男の子がマンツーマンで30秒に1回くらいほめてくれて。「だいぶ曲がるようになりましたね」とか「調子いいですね」とか。で、なかには「爪がきれいですね」とか「いい匂いしますね」とかも入ってきて、体をペタペタ触ってくるんです! それが嘘だなんてわかってるけど、その気遣いがうれしいんですよね。

鈴木:そこも値段、高そうですね。

峰:一晩10万てことはないけど、月に10万くらいしますね……。でも私は入会しましたよ! もっと男も女もどんどん消費し合えばいいんですよ!

【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動

【峰なゆか(みね・なゆか)】
漫画家。アラサー世代の女性の恋愛観、SEX観を冷静に分析した作風が共感を呼び各誌で活躍中。「アラサーちゃん 無修正」(1~3巻、以下続刊)は累計40万部を超す人気作となり、14年7月には壇蜜主演でテレビドラマ化された

<取材・文/おぐらりゅうじ 撮影/尾藤能暢>

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