ホーク・ウォリアー「そう、新しい生活It’s my new life」――フミ斎藤のプロレス読本#011【Midnight Soul編6】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
1992年
つい数か月まえ、ホークとアニマルは9年間つづけてきたコンビを解消してしまった。なんだか、あまりにもあっけない感じだった。
どうやら、チーム解散を先に口にしたのはホークのほうだったらしい。ふたりはそれまで年間250試合のスケジュールをずっといっしょに闘ってきた。1年じゅう、おたがいの顔を見ない日なんてなかった。あくまでもふたりひと組でロード・ウォリアーズだった。
アニマルは、もうしばらくコンビを組んでいたかったようだ。タッグチームとしては最後の海外遠征となったイギリス・ツアー中、ふたりはこれからの活動について率直な意見を交換するミーティングの場を持った。
そこでどんな話し合いがあったのかはわからないけれど、結果的にホークはツアーを途中で放り出してアメリカに帰ってしまった。
ウォリアーズがLOD(リージョン・オブ・ドゥーム)のチーム名で専属契約を交わしていたニューヨークのメジャー団体WWEは、試合を無断でボイコットしたホークを出場停止処分にしたが、ホークのほうでももうニューヨークに戻るつもりはなかった。
それから2カ月後には、けっきょくアニマルもWWEを退団した。ひょっとしたら、ある部分ではホークよりもアニマルのほうがロード・ウォリアーズに愛着を持っていたのかもしれない。
「ここ何年かでね、いまがいちばんハッピー。ほんとうだぜ。なんだか、デビューしたころに戻ってもういちど最初からやり直しているような気分だよ」
そこまでいっきにいうと、ホークはそうなんだ、そうなんだ、と自分のことばにうなずきながらビールをぐっと飲み込んだ。
「オール・オーバー・アゲインAll over againってこと?」
「そう、ニュー・ライフA new life」
おそらく、もう何年もまえからマイク・ヘグストランドはホークとロード・ウォリアーズをほんとうの自分から距離をおいたところで客観視していたのだろう。
マイクの実家は男ばかりの5人兄弟で、3人の兄もすぐ下の弟もちゃんと結婚していて、それぞれ子どもが何人もいる。甥っ子や姪たちは会うたびに大きくなって、顔が変わっていてだれがだれだがわからない。
それにお父さんがずいぶんトシをとったらしい。いまでも同じ街に住んでいるのだから会いたくなればすぐにでも会いにいけるはずなのに、マイクだけはサンクスギビングもクリスマスも家にいたためしがない。兄弟といっしょに週末に食事をしたこともほとんどない。
1
2
⇒連載第1話はコチラ
※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス読本」と書いたうえで、お送りください。
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ