東京五輪・パラリンピックで密かに注目したい穴場競技「ボッチャ」とは?
~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第55回~
フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。
2020年東京五輪を見据えて現地観戦できそうな穴場競技を探している本稿。今回はパラリンピック競技のボッチャに狙いを定めました。オリンピックのほうにはないオンリーワンの魅力、そして2020年に向けて設置される有明体操競技場での開催という魅力。そりゃあもちろん、体操で日本の団体金メダルを見られれば最高ですが、その残り香をボッチャで感じるというコースも一応念頭に置いておくといいでしょう。トランポリンや新体操よりもラクに入れるかもしれないのですから。
今回向かいましたのは、東京都武蔵野市にある武蔵野総合陸上競技場・体育館。こちらはJFLの武蔵野シティFCが本拠地とするなど、スポーツを通じた地域住民の活性化・健康増進に貢献している施設です。武蔵野市からほど近い調布市には、2020年に向けて新設される会場で第一号のオープンとなった武蔵野の森総合スポーツプラザもあり、地味に「五輪熱」を帯びている地域でもあるのです。
今回はこの会場で、ジャパンパラ競技大会のひとつであるボッチャ競技大会が開催されました。リオパラリンピックでは団体・銀メダルを獲得した日本選手団が、世界最強のタイ選手団ら海外の強豪を迎え撃つ。ジャパンパラ競技大会は、以前にもウィルチェアーラグビーで訪問していますが、世界のトップとトップが激突するようになっている、なかなかに熱い大会なのです。
なぜ、微妙に詳しいローカル情報を紹介したかと言いますと、こちらの会場、僕の自宅から歩いていける距離にあるご近所さんだからです。普段から僕自身も「地域住民」として格安のトレーニング施設を利用したり、JFLの試合を観戦していたりするのです。なので、普段の感じとの違いなどもハッキリと感じられるはず。いつにもまして、視察の効果が上がりそうです。
観客はざっと数えて300人から400人はいたでしょうか。主催者発表では「1000人を超える」とされていましたが、それは大会期間2日間の延べ人数ということでしょう。JFLの武蔵野シティFCの試合が行われる場合は、多いときで1500人程度訪れることもありますので、客入りはボチボチといったところでしょうか。揃いのトヨタのシャツを着込んだ企業応援団的な集団も見られ、選手たちも普通に客席に混ざって座っています。「お客」の実数としてはそれほど多くはなさそうです。穴場感強めです。
ただ、油断できないなと思ったのは車イスに乗った子どもたちなど、将来のプレイヤーと思しき観客が多く見受けられたこと。そのことは併設されるサブアリーナでの「ボッチャ体験会」で感じられたのですが、普段からプレイしていると思しき子どもが、ボッチャ初体験のお客に混ざり、サポートしたり一緒に遊んでくれたり、見本を見せてくれたりしたのです。
妙に子どもが多いなとは思ったのですが、「彼らはプレイヤーなんだ」とわかって納得です。多くの穴場競技に見られる「客席に座っているのは日体大の後輩」みたいな現象が、ボッチャでは静かに生まれているのかもしれません。プレイヤーがトッププレイヤーに憧れて、そのプレーを見守る。野球場のスタンドに野球少年がいる的な現象。単にスポーツ観戦として見守る物見遊山勢だけでなく、そういったボッチャ内での再生産サイクルが盛んなんだな、というのは思いがけない気づきでした。
ほかのパラ競技でももちろん将来のプレイヤーというのはいるのでしょうが、ボッチャでひときわそういった印象を受けたのは、ボッチャ競技ならではの特性があるかもしれません。この競技は、もともと脳性麻痺の人でもプレイできるように設計されたということで、とにかく敷居が低い。身体的不自由の有無はもちろん、男女や年齢、体格といった要素も含めて、誰でもが参加できるように設計されています。
簡単にルールをまとめますと、ボッチャはカーリングとよく似た競技で、「狙った位置にボールを近づける」ことで勝負します。狙う場所となるのは、先攻チームが投げるジャックボールと呼ばれる白いボールです。白のジャックボールをめがけて両チームがボールを投げていき、相手チームよりも的に近いボールを投げたチームが、その個数ぶんの得点を得るという仕組み。まさにカーリングみたいな感じです。
カーリングと違うのは、カーリングで狙うのはあらかじめ地面に描かれた的の中央ですが、ボッチャは「ジャックボール」なのです。だから、最初にどこにジャックボールを置くかで展開はまったく変わってきますし、どうにもならなくなったらジャックボールを動かして状況をリセットすることもできるのです。
また、ボールを投げる順番は「一番近いボールを持っていないほうが、一番近いボールを持つまで何度でも連続して投げる」という仕組み。ミスがつづけば相手より先にボールが尽きてしまい、一方的なゲームになる可能性もある仕組みです。さまざまな状況が起き得るぶん、カーリングよりも複雑なゲームと言えるかもしれません。
間口はとてつもなく広いのに、選手間の駆け引きなど競技としての奥深さもしっかりあるボッチャ。そんな見どころある競技が世間的には超無名とあれば、これはかなりの狙い目。次回、フモフモ編集長がそんなボッチャのさらなる魅力に迫る!
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