転職したら職場で孤立…デザイナーになる夢をかなえた30代男性の悲劇
「3年前に念願のアパレル業界に転職できたものの、仲間外れにされて孤独な日々でした」とがっくりと肩を落と庄司幸秀さん(仮名・38歳)。
「自分にも非があるから、ますます孤立したんです。後悔しても遅いですけど……」と語る彼。一体何があったのか。
学生時代から絵が得意で、コツコツと好きな服のデザイン画を描いていた庄司さん。将来の夢はもちろんデザイナー。大卒後は、ブライダル関係の企業に入社するが、配属されたのは希望の部署ではなく、披露宴の予約などのデータ入力や事務処理を行う宴会部門だった。だが与えられた仕事を忠実にこなし、その後ウェディングドレスのレンタル部に異動された。
庄司さんはそこで夢を叶えるチャンスをつかむ。庄司さんのデザイン画を見たレンタル部の部長が、アパレル会社のデザイナー職を紹介してくれたのだ。
「ブライダル会社の部長は、僕がここでは伸びていけないと思ったそうです。もし合わなければ戻ってこいと激励の言葉をかけてくれました」
このアパレル会社は庄司さんの好きなブランドも生産しており、社員50人の中堅会社。新卒採用が中心で、デザイン部に中途で入社したのは庄司さんが初めて。入社が決まってからの気分はウキウキだった。
「夢が叶って、これから楽しい日々が待ってると信じて疑いませんでした」
だが現実は厳しい。入社後、社内で彼に声をかけてくれる人は誰もいなかったのだ。
「中途入社の僕は完全によそ者扱いという感じの空気でした。さらに不運だったのが、入社してすぐ、僕が好きだったブランドの生産が終わってしまったんです。ブランドシリーズの継続を会社が断念したため、僕は新たなプロジェクトチームに入りました。でもそこは仲良しデザイナーグループが占領して、僕の入る余地がなかった」
35歳で他業種に転職の難しさをかみしめた庄司さん。コミュニケーションを取ろうとしたが、前職は一人で仕事をすることが多く、仲間同士でつるんでいるプロジェクトチームに入りこめなかった。
「しかもほとんどが女性。男性は管理職一人。誰とも話さず、一日中何もすることがなく、途方に暮れました。そこでスマホをいじってデザインのネタを探すことにしたのですが、これがますます自分を孤立させる原因となったんです」
デザイン画のためにスマホを使用していたのに、「あの人は仕事中、スマホで遊んでいる」とプロジェクトチームの女性たちが、上司に訴えたのだ。庄司さんは弁明したが、入社一か月も経たなかったため、すっかり信用がなくなってしまった。
憧れのデザイナーになれたのに…
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