第269回

7月3日「仕事選ばないハル・ベリー、ナイス!」

・『X-MEN ファイナルディシジョン』試写。様々なミュータント達が変身、念動、物体透過、瞬間移動、火炎、冷凍、飛行、分身、……etc.それぞれの能力を発現して戦う、という実にコミック的な状況を生真面目にリアルに映像化する。

・最先端SFXというより、枯れた技術の水平思考である。他の作品で既に検証された技術を、最高のキャスティングとセッティングで、徹底的に予算をかけて、派手に使い尽くす。そんなコンセプトなのだと思う。今回は、誰もが知っている有名な風景を、地形ごとねじまげてしまうシーンが圧巻。

・技術だけでなく、脚本も実によく練れている。シリーズが進むに連れてミュータントが増えそれぞれに深刻な事情を背負い悩んだりしているが、決して話を複雑にすることなく明快な群像劇として見せる。その中に緻密に張り巡らされた伏線とその見事な解消に、唸らされるのである。

・「実はアレがアレのアレだったって、気付いてた?」的な蘊蓄を彼女にトクトクと語りたかったら、一人で先にこっそり見に行っとくといい。それはエンディングまで、そしてエンドロール後まで続くので早めに席を立たないこと。

7月4日「仕事選ばないソニー千葉、ナイス!」

・『マスター・オブ・サンダー』試写。倉田保昭・千葉真一が映画初共演、しかも直接対決あり!! という、中年世代には奇跡のような、しかし若い人には意味不明の豪華企画。

・邦画は国際的には通用しないと思われているが、実はテレビドラマの「特撮ヒーローもの」「戦隊もの」は、世界で十分ウケている。それどころか、北米やアジアなどでは圧倒的ブームといえる状況を作っているのである。フルデジタル化してからは、SFXシーンのクオリティーもがんがん上がっている。なら、そのノウハウを生かして、その延長で映画を作ってしまえば……という発想だろう。
そこに、香港やハリウッドで血と汗を流し、カルト化するに至った二人のアクションを、その新しいステージに迎える、という、これは野心的なようで隙のない企画である。

・木下あゆ美、永田杏奈ほか特撮テレビシリーズの人気タレントがずらりと出演している。が、倉田保昭60歳・千葉真一67歳……合わせて127歳の還暦コンビがものすごく本気のアクションを見せるところがなんといっても凄い。孫の年齢の監督のもと、ワイヤーに吊られ、骨折しそうな勢いでハードに戦うのだ。泣けるほどかっこいい。年取っても枯れちゃいけない。

7月5日「日本のカルト映画といえば」

・「週刊ファミ通」誌の取材を受ける。1986年公開映画『ゲーム・キング』についての記事。今やカルト・ムービーとなっているこの作品の構成をやったのが、若き日の渡辺浩弐なのであった。まさか、この仕事が20年も残るとは。どんなに戯けたことでも、いや、戯けたことほど一生懸命やっといた方がいいですね。

・時を経て先ほどDVD化もされ他でもないファミ通レーベルからリリースされたようだ。が、その印税の入金がまだなので、楽しみに待っている。と、いうような話。探してみたら当時の台本も出てきた。最初は具志堅用高とか間下このみも出てたんだよ。

2006.07.19 |  第261回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。