渡辺浩弐の日々是コージ中
第160回
4月4日「インドアでサバゲー」
・アシッド社のデジタルシネマ撮影を見学した。まず、そのロケ現場が面白かった。麻布のバード東京というお店なのだが、バースペースから見下ろせる半地下に映画のセットのような空間がある。『ペイントボール』のプレイフィールドだ。赤いインクが封入された弾丸で撃ち合いをする新スポーツ、つまり限定されたスペースでのサバイバルゲーム。弾は30発のみ、わずか30秒程度で決着がつくというものである。ちょっとだけ遊ばせてもらったけどこれ多人数でやると無茶苦茶熱くなりそう。
・さて撮影ではグラビアアイドルの内田さやかさんと花井美里さんが撃ち合いをしていて、局部的にTHE大美人な感じだった。ハイビジョンでこういうクリップやショート・ムービーを量産してゆき、DVD発売やオンライン配信など様々な方法で公開していく試みらしい。『Babystyle』というシリーズタイトルで、DVD第1弾は6/10発売予定。
4月5日「孫正義と水野美紀と渡辺浩弐」
・集英社にて打ち合わせ。やりたいやりたいと騒いでいたネット小説の連載が決定したのだ。同社j-BOOKSサイトで、4月末から。タイトルは『晴れときどき女子高生』。挿し絵はあの岡崎武士先生が毎回描きおろし。
・この企画を進めて下さってる集英社の野村武士さんは同郷の2年先輩で、中学生当時からよく知っていた(福岡の片田舎の中学だけど、他に孫正義さんや水野美紀さんもここの出身である)。ちなみに以前紹介したスクウェア・エニックスの田口さんは1年先輩。この3人は小学校も、それどころか以後進学した高校も同じだ。僕が1年生の頃、3年にいた野村先輩はクイズグランプリ高校生大会に我が校代表で出場して見事全国優勝した。
4月6日「仕事しよう」
・岡崎武士さんと遠野ヤマさん、そしてスクエニ社の熊さんと『プラトニックチェーン』関係の世界観、特にビジュアルイメージの打ち合わせ。渋谷の風景、ケータイの形状、登場キャラクターのファッション等。僕の任務はシミュレーションであり、そこから先は絵描きさん達の才に委ねる形になる。
・その後、遠野さんを連れ回転ドアを見学に。遠野さんは六本木ヒルズどころか東京タワーも知らなくて(本当!)それはそれで凄いと思った。*遠野さんと一緒にやっている「Gファンタジー」誌の連載、好評のようで続くことになりました。18日発売号から復活。新機軸で行きます。
4月7日「羊」
・若い頃、海外をふらふらしていた時期があった。別に正義感を持ってジャーナリストをやっていたわけでもボランティアをやっていたわけでもなく、むしろ現地のチンピラに近い状況。そういう時、経済的に追いつめられてくると、非常に悪い考えがわいてくる。
・その悪い目線で日本人観光客の緊張感のない顔を見ていると、チョロイぞこれは、と思えてしまって仕方がない。アジア人だらけの場所でも日本人だけは、どんなぼろぼろの服を着ていても汚れていてもすぐにわかる。自分は悪いことなんか何もしてないから絶対にひどい目には遭うはずはない、と、そう信じ込んでにこにこきらきらしているから。
第159回
3月31日「CG-U23」
・TIGRAF(東京国際CG映像祭)のプレイベントとしてユースコンテストというのが始まる。審査を引き受けることになりそう。CGを学んでいる学生(大学生、専門学校生)が対象で、登竜門としての機能を目指すとのこと。若い人達の就業機会を増やす施策の一つとして経済産業省からのバックアップもあり。
・優秀なクリエーターを発掘し、スター化していくことはもちろん大事だ。しかし、今は彼等に名だけでなく実を得させることの方が急務なのである。層が厚いのに、仕事がない。CG業界も、マンガ業界と同様の状況になってきている。仕事というのはサラリーマン生活という意味に限らず、就職しないでひらきこもって生きていく方法論をいろいろ提示するという手もあると思う(ただし専門学校は『就職』を売りにするのなら実質的な就職率を明らかにすべきだ)。
・募集対象を、学生だけでなく、自称クリエーターの無職フリーターまで拡大してほしいとお願いしておいたけど、もし無理でもやる気のある人はなんとかごまかして応募してきてほしい(年齢ではじかれた作品でも僕は真面目に拝見します)。
4月1日「モンドゲーム」
・D3パブリッシャーの『SIMPLE2000』シリーズのモンド化というか良い意味での「なんじゃこりゃ化」が進んでいると以前書いた。最新作『THE大美人』(5/20発売)のサンプルが届いて、早速プレイ。
・これはお薦めするしかない。突如ゴジラくらいに巨大化してしまったグラビアアイドル双葉理保(17)が、ビキニ姿のままで沖縄から日本列島を北上し始める。プレイヤーは自衛隊の立場で彼女の行動を阻止すべく緊急出動する。ヘリに、戦車に、戦闘機に乗り込み作戦任務遂行にあたる。そのぷるぷる揺れる尻や乳に麻酔弾を撃ち込んだりするわけだ。
・このゲームの制作者は「巨大女」フェチなのだろうか。巨大化したダリル・ハンナやフジアキコ隊員やゴマキで興奮してしまったクチなのだろうか? という謎はおいといて、こういう企画ができる『SIMPLE2000』シリーズは硬直化しかけたゲーム界において貴重だと思う。
4月2日「?」
・高城剛さんへのインタビュー依頼が僕のところに来た。
4月3日「技術と美術」
・恵比寿ガーデンプレイスの都写真美術館にて、『インフォメーション・アートの想像力展』がスタートした。大学生によるデジタル系アート作品の展覧会だが、美術系だけでなく工学系の学部からの参加も多い。
・小動物の視覚を味わう体感映像システムや、触れると光量や色彩が変化するベッドなど。情報工学やネットワーク技術からのアプローチが面白い。新しいエンターテインメントはメディア業界や美術界だけでなく学界までがまぜこぜになった中でのコラボレーションから生まれていくのだろう。4月18日まで。
第158回
3月28日「ルーキーに向けて」
・「TAF(東京国際アニメフェア)2004」。第3回目にして世界屈指のアニメ見本市に成長したことは本当にめでたい。ただし、このイベントはあくまでも東京都の施策であることを忘れてはならない。つまり、ここではアニメが地場産業としての価値を扱われていることに意義があるのだ。
・東京のアニメは世界の注目を集めている。産業としてすぐ目の前に大きなチャンスが見えている。これを逸しないために今最も重要なことは、優秀な作家が専業で「食べていける」状況だと僕は思う。
・だから今回は、インディーズのCGクリエーターに場を提供した『クリエーターズワールド』と、若い人とプロをつなぐ交流の場として設定された『アニメルーキーズ』の2企画が興味深かった。アニメルーキーズでは若いクリエーター向けのトークライブも行われ、僕も出演した。「デジタルマンガの可能性」というテーマで、なかなかディープな話ができたと思う(ここで事前告知しておけば良かったのだが、僕もTAFのホームページを見て初めて『渡辺浩弐が出る』ことを知ったのである)。
3月29日「そろそろ具体的に」
・デジタルコンテンツ協会に。当欄でも何回か途中経過を報告してきた経産省の公募プロジェクト「ブロードバンドコンテンツのブレークスルー技術等開発支援事業」についての報告会。
・ブロードバンド関連の全く新しい事業がここで19件、立ち上がった。それも単なるプレゼンテーションやプロトタイプとしてではなく、具体的なビジネスとして。成果は ネット上でかなり詳しく発表されているので、ぜひご覧頂きたい。日本のブロードバンドコンテンツ産業はこんな感じで立ち上がっているという実例がここにある。→http://www.broadband.dcaj.or.jp/
・ところで審査員の一人、森田貴英さんは週刊文春の件で時の人になってしまった弁護士である。面白いのでしつこく話を聞こうとしてうるさがられてしまった。
3月30日「アメリカの恐怖」
・『ドーンオブザデッド』試写。ジョージ・ロメロ監督のオリジナルは今見直すと叙情性もある作品なんだけど、これは腹にドーンと来る怪作。ゾンビがとにかく異常にパワフルなのだ。全速力で駆け回り、飛びかかってくる。
・ゾンビ映画は若い才能がそれぞれの持ち味を生かせるジャンルとして重要だ。そして深読みするとその時代ごとの恐怖を映し出す鏡としても機能する。かつてのゾンビは弱くてしつこいところがすごく怖かった。最新のゾンビは強くて、しつこい。
・アメリカはかつてベトコンに対する恐怖によって戦争に負けた。今は例えばアルカイダの恐怖と戦っているわけだ。ただしアメリカがいちばん恐怖することは変化していない。相手が「恐怖を感じていない」ことだ。そう考えるとゾンビ映画って本当に普遍的なのである。