渡辺浩弐の日々是コージ中
第150回
04年1月30日「900iよゲーム機になれ!」
・ドコモのFOMAにiモードを載っけた最新機種「900i」には、ゲーム機としての期待も大きい。パケット通信のスピードは従来の10倍以上。これまでより高度なゲームが短時間で、かつ安上がりにダウンロードできる。マシンの容量もぐっとアップしていてファミコン時代くらいのサイズのゲームならいっぺんにまるごとダウンロードできる。テレビにつなげる機種もあり、コントローラー型ゲーム機として使うなんてこともありかもしれない。
・しかし、なかなか本体が発売にならない。妄想を膨らませていたら、『iモードスタイル』誌からお声がかかった。900iのゲーム特集企画で、コナミ社への取材に同行し、対談形式であれこれ勝手なことを言わせてもらうことになった。
・ここでプレイさせてもらった『グラディウスNEO』@900i専用バージョンのクオリティーの高さに驚いた。往年のグラディウスのあの楽しさを、ほぼそのままに再体験できる。ケータイ向けゲーム特有のストレスも、あまりない。ケータイの、小さいけれどもくっきりしたデジタル画面に合わせてゲームデザインを工夫しているのだろう。
・コナミはケータイからこのゲームの再ブームに火をつける自信があるようで、PS2向けに『グラディウスV』も準備しているそうだ。コナミは、間違いなく900iに超本気なのである。新型ゲーム機に飛びつく前にまずケータイは買い換えとこう。
04年1月31日「宮本茂さんは?」
・青色LED「200億円」判決について、いろいろ聞かれるので、一言。企業と個人の関係性が激変している状況を象徴する出来事だと僕は思う。もう会社は社員の全存在について一生の面倒をみてくれたりは、しない。その代わり、個人は稼いだ分だけは払ってもらうし、イヤになったらすぐにやめる。そういう時代になっているのである。
・頭の良いコーディネーターはゲーム業界のスタークリエーターへの接触も試みているようだ。が、ハイテク業界でもゲーム業界でも中村修二氏のような例は、今後はあまり出てこないと思う。ああいう研究なら個人でスポンサーを見付けて完遂するというやり方が主流になるはずである。また、企業の側も、発明家としての才を持つ研究者についてはサラリーマンとして抱えない方向にゆくだろう。
・それから重要なことは、そんな時代、200億稼ぐ人もいれば、200円も稼げない人も出てくるということなのである。特に日本は超金持ちか超貧乏人しか、いなくなるだろう。200億にわくわくしてる皆さん、そこのところ、わかってますか。
04年2月1日「アニメのハリウッドを目指して」
・杉並の公民館でアニメーションフェスティバルをやってたので、見に行ってみた。アニメ制作会社が密集している杉並区では、こういう機会を区主導で設けて、各社の実験的作品の上映や、人材育成のためのワークショップやシンポジウムを行っているのだ。
・上映会の作品選定は、古いところは009やハイジの劇場版、新しいところではアップルシードやキャシャーンのハイライトなど、いい線をついている。そして「アニメ・マンガ・声優 進学相談会」「高校生アニメキャラクター・デザインコンテスト」等、地元の若い人を元気付けるための企画が並ぶ。セルシス社他の協力を得て、パソコン上での2Dアニメやクレイアニメを制作を体験できるコーナーもあり、小学校低学年の子供たちが熱中していた(=写真)。
・アニメ制作会社の現場をそのまま再生した部屋もあった。商業イベントやマニア向けイベントとはまた違う形で、充実した内容だった。こういうのって見過ごされがちなのだけど、遠くからでも参加する価値はありだと思う。次の機会には早めに告知したい。
第149回
04年1月27日「今デジタルコンテンツの代表選手は」
・DCAj『デジタルコンテンツグランプリ』贈賞式。経済産業大臣賞は劇場用アニメ『東京ゴッドファーザーズ』と、アニメ制作ツール『RETAS!シリーズ』、そしてDCAj会長賞はアニメ制作会社「プロダクションI.G.」代表の石川光久氏……と、アニメーション関係がメインをしめていた。
・僕も審査の末席にいたが、審査過程で「アニメばかりではまずくないか」という意見はなかった。非常に自然な流れの中で高評価が集まったのである。日本のアニメがうまくデジタル化の波に乗りつつクオリティーを上げているということを正しく証明した結果だと思う。この勢いで、ゲームと同じように産業としても世界進出を成功させてほしい。
04年1月28日「全員集合! ウィスーット!!」
・『アタック・ナンバーハーフ2 全員集合』試写。オカマのバレーボールチームが国体に出場して優勝してしまったというタイならではの実話を元に製作されたヒット作の続編。前作の「前」と「後」の話をうまくまとめ、世界各国に広がった『サトリーレック』ファンへのサービスに撤した一品。前作のグループ感にヤられた人は必見。
・地域文化的にとんがった作品ほど、実は国際性をもてるってことをつくづく感じる。よその人にはキツすぎるくらいがいいのである。世界市場を狙おうとしてワールドワイドなテーマに走る必要はちっとも、ないのだ(そういう意味でも『東京ゴッドファーザーズ』は欧米で結構当たりそうな気がしている)。
・さてタイ語の独特のビートって絶対得だと思う。名前だけでも面白い。監督がヨンユット・トンコントーン。プロデューサーはウィスーット・プーンウォララック。なんかいかりや長介の挨拶みたいである。
04年1月29日「血肉で書きたい」
・こないだこの欄で「バイオ認証のすすめ」という文を書いた。僕がマイ血液を使ったマイ朱肉を使ってるって話。これを読んだ北原さん@アシッド社が、興味深い技術の情報を送ってくれた。
・DNAインクというものだ。静脈パターン認証などのバイオメトリクスで知られるアイディーテクニカ社の独自技術で、これ、すでに実用化段階らしい。人や動植物のDNAを抽出して(血液や口の中の粘膜を使う)、病因などに関係のない部分を合成DNAとして増殖させる。これを混入してインクを製造するわけである。DNAの、磁気を当てると個別の周波数で共鳴するという原理を生かし、小型の読み取り機で一瞬のうちに確認できる。
・捺印だけでなく印刷に使うこともできる。取りあえずは食肉や農産物、あるいはプランド商品の出自証明タグとしての活用が考えられているそうだが、僕は自分のDNAを使って自著を印刷してみたいのだ。
第148回
04年1月20日「ひきこもり殺人鬼」
・『テキサス・チェーンソー』試写。50年代アメリカに実在した殺人鬼”テキサス・チェーンソー”を題材にしたものとしては『悪魔のいけにえ』(’74)という傑作というか極悪映画がある。これに打ちのめされてホラーマニアになってしまった人はとても多いと思う。そう言えば泉谷しげるさんもベストワンに挙げていたなあ。これはそのリメイク作品だけど、ラストの爽快感と後味の良さがオリジナルとはかなり違い、一般の方々にもお薦めできる。デートで見ても良いレベルだ。
・そして今なら「”テキサス・チェーンソー”はひきこもりだった」という解釈で観ることもできる。殺人マニアになってしまったハンディキャップの少年を家族のみならず地域住民全体でかくまっている。そんな町に、よそ者の、それも脳天気で失礼な若者達が乱入してくると……という展開なのである。
04年1月21日「目だって手だって2つあるし」
・任天堂が新ハード「ニンテンドー・ディーエス(仮称)」の情報をリリース。画面が2つ付いてる携帯ゲーム機で、今年末発売予定。任天堂のことだから2画面だからこそ生きてくるゲームのイメージを具体的にいくつか形にしてから、ハードウェア開発に進んでいるはずである。
・GBAは圧倒的に売れ続けているがゲームキューブがふるわない任天堂がここ数年非常に熱心に研究していたのは、GBAとゲームキューブを接続して、2画面を生かしてのゲームだった。その現場で、素晴らしいアイデアが生まれたのではと期待する。ゲームキューブと心中させるには惜しすぎるようなアイデアが。
04年1月23日「妄想は街のエネルギー」
・『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』の2作品がアカデミー賞にノミネートされている今敏監督のTVシリーズ『妄想代理人』(2/2~ WOWOWでOA)試写。
・金属バットを持ちローラーブレードで疾走する通り魔少年、通称”少年バット”のウワサが都市の中で様々な人々の妄想を産みつつ連鎖増殖していく。『東京ゴッドファーザーズ』で完成させた、現在日本の街や人をリアルに美しく捉えていくノウハウを生かした作品。そしてものすごくかっこいいシーンを並べていって、それできちんとストーリーを成立させていくところが見事。美しいパズルが組み上がっていく様に魅せられる。
・話変わるがロッテから『シングルビーンズチョコレート』(カカオ産地限定のシリーズ)の試供品が送られてきた。別に誉める義理はないんだけどコレすごくおいしい。