第332回

10月11日「PS2.5を!」

・ソニーが新型PS3(11/11発売・¥39,980)でPS2との互換性を切り捨てたことが話題となっている。その真意はどこにあるのだろう。

・推測その1。ソニーは今後PS2を、PS3とは別コンセプトのハードとして売り続けるのではないか……というか、メーカー側の意図があってもなくてもこれは「結果的にそうなる」ように思える。まだPS2で十分だというユーザーは多いし、ゲームメーカーとしては制作のしやすさとマーケットの大きさはやはり魅力なのだ。そしてこれほどの普及率を達成するマシンが今後おいそれと出てくるとは思えない。

・その2。「互換性なし」といいつつ、新型PS3には実はほとんどのPS2ソフトが走るようになる仕掛けが隠されているのではないか。PS2のチップを搭載しなくても、ソフトウェアエミュレーターを積んでゲームを動かせるようにすれば、原価はかからない。ただしこの場合、全てのPS2タイトルを完全に動かせるとは限らない。そもそも下位互換マシンに完璧を求めるのは難しいことなのだが、現在のゲームマニアはそれを許してくれないだろう。そこで、スペック表示としては互換性をあえて外しておく、ということでは。

・その3。そのエミュレーターを本体に積まないで、個々のソフトに使う。GBAでファミコンソフトを再リリースしてた、あのやり方ですね。PS2ソフトはPS3の環境で再生すれば、別物といって良いほどクオリティーが上がる。これはもっと訴求しても良いポイントなのだ。そこで、過去のPS2ソフトをあえてPS3向けに「PS2.5」ソフトとして作り直しリリースし直すのである……これも、「結果的にそうなる」ように思える。

10月15日「大新聞より大きい新聞とは」

・共同通信社のSさんと食事。同社から全国地方紙の文化面に配信されているコラム「見聞録」にレギュラーで原稿を寄せている。

・通常は掲載紙誌のページや読者を想定しながら書くわけなので「共同通信」に書くということの意味に気づいていなかった。今日、第1回分コラム(ニコニコ動画について書いた)の掲載紙を頂いて驚いた。新潟日報に四国新聞に京都新聞に……すごい数だ。つまり配信された文章を、各紙がそれぞれのタイミングで、それぞれのレイアウトで掲載していくという形体らしい。

・首都圏にいると忘れがちだが、ほとんどの地域でナンバーワンのシェアを持っているメディアは現地の地方紙なのである。僕のコラムはどれくらいの部数の新聞に載るかと聞いたら、累計はおそらく2.000万部くらいでしょうかということ。身が引き締まりすぎて金縛りになりかけた。部数だけで一概に判断することはできないかもしれないが、こりゃ問答無用ですごい。通信社って、実は日本最大級のメディアなのだ。

・メジャー新聞業界は合従連衡を余儀なくされるところにきている。情報産業は紙や電波に特定されない「配信コンテンツ」を軸に再編成されるのではないか。

10月16日「猛暑の後の秋は豊かだ」

・山を歩く。すすき野原は風が見える感じが良いですね。

・ヤマボウシの赤い実がたくさんなっている。ほおばるとマンゴーそっくりの味。

・森で拾った栗は中に虫(ゾウムシの幼虫)がいることが多くて、食べてる時に出てくると当たりを引いた気になるね。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。