俺の夜
スナックとキャバクラの違いって何?――スナック愛好家を自任してから、幾度となく投げかけられてきたこの手の質問。「キャバは女のコを口説く場所、スナックは女のコとの会話を楽しむ場所」なんて回答も、「ママの目を盗んでスナック嬢としけ込もう」とする男たちのバトルを幾多となく見てきただけにチト弱い。風営法の種類、料金設定の違い(チャージ制か時間制)など回答群は多いが、いまだに答えは見つからないままだ。
思い悩むスギナミの耳に飛び込んできたのは、「スナックとキャバクラのいいとこどり」という触れこみで増殖中の “スナキャバ”なる新業態。システム的にはキャバクラと同じだが、隠された“スナック色”を見つけることで、この問いに答えが出せるのかもしれない。早速、調査に向かった。
格安料金でも美女がマンツーマンでつく
まず訪れたのが神田にある“スナキャバ”の先駆け的存在ともいえる「EGOIST」。瀟洒な店内には、ドレス姿の女性たちが百花繚乱。愛嬌のある笑顔を振りまきながら、一ノ瀬愛ママ(28歳)がエスコートしてくれた。
「スナック並みの低料金で飲めることがウリです。ボーイさんを置かずにキャスト全員で店づくりをしてるから、このお値段でできるんです」
オールタイム45分3500円、指名料1000円と破格の料金。
「もちろん女のコのレベルも高いですよ」と言って愛ママが席に呼んだのは、昼は会社勤めのミアちゃんと巨乳美女の愛結ちゃん。彼女たちに限らず、総勢27人のキャストの9割は昼職との掛け持ちだ。
「今夜はパーッと飲みましょ。でも昨日は飲み過ぎて、ヒザを打っちゃったけど(笑)」
そう言ってドレスの隙間からアザを見せる愛結ちゃん。気取らない魅力は会話、仕種のそこかしこに表れる。小腹が空いたと注文すれば、近隣の飲食店からデリバリー。出前の手数料はかからず、これも懐に優しいスナキャバ設定だ。フードの持ち込みも無料で、隣のお客さんが「餃子を買い過ぎちゃったから、そっちでも食べてよ」と、ボックス仕切りのないスナックコミュニティを堪能できる。
【EGOIST】
東京都千代田区内神田3-22-10 ハチヤビル2F
電:03-6206-4033
営:20時~ラスト
休:土日祝
料:45分 3500円(税・サ込み)
神田駅北口から徒歩30秒。フードの持ち込み料無料 HP(www.club-egoist.com)
スナキャバでの楽しみ方はガチ恋よりエンタ派で!
キャバクラ、スナックが渾然一体となった中野ブロードウェイの裏通りにスナキャバ「Olive」を発見。韓流好きのみずきちゃんと中野で評判の酒豪・めぐちゃんの2人が「いらっしゃ~い」と元気なかけ声でお出迎え。料金は60分4000円~と、こちらも低料金。入店時、女店長との値段交渉がOKと、アドリブがきくところにもスナック色を強く感じる。基本料金の安さは、そのまま遊び方の幅も広げてくれる。安ボトルを入れて、「ヒット曲メドレー、歌えなかったら一気」の流れに。
同じ遊びを高級キャバクラでやれば、いくら請求されるか想像もつかないが、スナキャバなら諭吉一枚でお釣りがくる。お店の女のコ、常連客と一緒に盛り上がりたい、エンタ派にオススメの業態だ。
【Olive】
東京都中野区中野5-46-4 慶NAKANOビルB1
電:03-3388-5508
営:21時~ラスト
休:日
料:60分 4000円~ 焼酎、ウイスキー飲み放題
アイドル戦国時代と呼ばれて久しいが、ブームの原動力となったのは、AKB48に代表される、“会えるアイドル”というコンセプト。人気グループの握手券にはプレミアがつき、その内容も握手会からハグ会、生キス会などへと細分化。アイドルにハマった記憶は南野陽子、森高千里止まり。“アイドルとの接触は聖域”だったスギナミ世代にとって、この変化はやはり革新的であり、「生まれる時代を間違えたか……」なんてボヤく始末だ。
ブームになれば、人・カネが集まってくるのも世の常。有能なクリエーター、プロデューサーがこぞってアイドル育成プロジェクトに参戦。“仕掛け”の妙味で世間を「アッ」と言わせるのはもちろん、歌唱力・ダンスといった技術ベースの底上げも年々高まり、アイドルビジネスの視点でみても、相乗効果を生んでいる。
多角化する一方のアイドルビジネスシーンだが、それは飲食業界にも波及している。すなわち「アイドルに会える飲食店」が、よりマニアックにシステムを変えているというのだ。その最新進化系を、2号にわたってお届けしよう。
客がアイドルの育成システムに参加
まず訪れたのは「AKIHABARAバックステージPASS」。カフェスタイルでキャストが接待し、ショータイムで歌とダンスを披露――というスタイル自体は以前からあったが、最大の特徴は、客がプロデューサーとなって、アイドル育成に参加できる点。飲食や来店を重ねるごとに貯まったポイントでプロデューサーランクが上がり、推しキャストに投票する際の“掛け率”が上がるという仕組みだ。この日は、100人を超える在籍メンバーの中から、年間“推しランキング”の上位3人がアテンドしてくれた。
「一人ひとりのプロデューサー様から直に意見や感想を言ってもらうことが多いです。すると、ステージでも『見られてるから頑張ってアピールしなくちゃ』って意識が強くなるんです。みなさん目が肥えてるから」(針尾ありさ)
平日昼間はレッスンの様子を眺めながら食事することも可能。練習、接客、ステージを総合的に判断して「今週はこのコがセンター」なんて“物言う株主”気分を味わえる。これは気持ちいいかも。「ランキングを気にしてたのは最初だけです。とにかく楽しんで一生懸命やってる姿を見せられれば結果はついてくるって意識に変わりましたね」(広沢麻衣)
投票システムがパフォーマンス力の向上に――ここでも正の相乗効果が生まれているようだ。
【AKIHABARA バックステージ PASS】
東京都千代田区外神田1-7-6
電:03-5298-5286
休:第2火曜
営:11~23時
料:チャージ1時間600円(1ドリンク付き)。
プロデューサーシステムの利用は「社員証」(300円)の登録が必要。同店から生まれたユニット「バクステ外神田一丁目」(作詞・作曲/つんく)の最新シングル「ヨロピクピクヨロ!」は’13年1月30日発売