俺の夜
いまどきギャルと異文化交流体験
高校1年生のときの話。女子プロの豊田真奈美に熱狂していたスギナミ少年の、身近な憧れの存在は男ではなく女。バイト先のコンビニにいた1コ上のまどか先輩だ。
首元にはゴローズのチョーカー。シブカジを愛し、ヴィンテージもののリーバイスを颯爽と着こなすイイ女。少しでも近づきたい一心で、バイト代の大半は高円寺の古着屋に消えていった。
硬派の代名詞だった彼女が“転向”したのは知り合って半年後のこと。ミステリアスなオーラを放っていた色白の肌は褐色に焦がされ、手元にはシャネルのバッグ。
「中年男とホテル街を歩いていた」なんて援助交際疑惑まで持ち上がり心底落胆。ちょうどその頃、優等生だった同い年の従姉妹が渋谷で補導されるというお家問題が勃発したこともあり、悪貨が良貨を駆逐するかのような、ギャル特有の集団心理にひどい嫌悪感を覚えたものであった。
そんなトラウマもあって、ギャルとの接触を頑なに拒んできたスギナミであったが、ふと、若者文化の中心からはじき出されたような感覚に陥ることがある。この20年間、変節を続けるギャル文化をボンヤリと眺めてきたが、直接対話をすることなしに、その生態を窺い知ることはできないからだ。
欠けたジグソーパズルの一片を探す旅に出よう――そう思い立つ僕は、ギャル文化の発信地・渋谷へと向かった。
渋谷センター街の中心地、宇田川町交番から向かってすぐ左のビルの7階に、5月にオープンしたばかりのギャルカフェ「テンション」はあった。
敬語NGの店内で距離がグッと縮まる
「いらっしゃいませ~。チョリザース(ピース)」
ムムッ? いきなりそうきましたか。行き慣れない渋谷という土地柄もあり、かなりのアウェー感。「電波少年」のバウバウ松村の心境でそそくさと席につく。
「お兄さん、な~に? そのハット。あ~わかったぁ! ケツメ! ケツメでしょ? 貸して、私もカブりたい~」
ヒョイッと帽子を取り、「代わりにこれあげる~」と、アイスクリームのかぶり物をかぶせてくるのは店長のきょんちゃん(26歳)。デビュー当時の宇多田ヒカルのようなタメ口調に、ついつい目元が緩んでしまう。
「ウチの女のコは敬語禁止だから。だって、トモダチ感覚で一緒に楽しみたいじゃない。あ、お客さんも敬語はダメだよ。言ったらテキーラ一気だかんね~」カフェというから、和やかにランチの展開を予想していたが、ちょっぴり波乱を感じる発言。夕方になれば店内の照明が少し落とされ、ナイトモードに突入。
「確かにギャルって閉鎖的に見えるかもしれないけど、男の人たちが思ってるより、ずっとオープンなんだよ。新橋系のトークも好きだし。それに、酔っちゃえば老いも若きも、男も女も関係ないじゃない。なんか悩みがあったら、このきょんママが聞いてあげるよ」そう言ってドーンッと胸を叩くきょんママ。酔いも手伝ってか、その姿が、出会った頃のまどか先輩とダブって見える。
「姉御――ッ(号泣)」
異世界の住人と思っていたギャルがこんなにも近い場所にいた。一回りも年下の女のコたちとフランクにトークを楽しみ、泣いて、笑う――そんな夜であった。
【ギャルカフェ・テンション】
東京都渋谷区宇田川町13-9 渋谷2ビル7F
電:03-6416-0419
休:無休
営:12~24時(ラストオーダー23時)
料:チャージ1000円(女性は無料)
「ハチ公(わんこ)そば」、「ガングロイケ麺(やきそば)」などメニューも充実
春は出会いと始まりの季節――とはいえ30代半ばの身としては少々重たくも感じるこの言葉。それは夜遊びのスタイルにおいても同様で、新人キャストの“心の性感帯”を探る楽しさより、古馴染みのオールドミスと傷を舐め合うような失恋トークを重ねたほうが、心休まる今日この頃だ。
「人生最後のモテ期、俺の黄昏流星群はいつ見つかるのか……」
阿佐ヶ谷の安スナックでそうボヤくスギナミを見て、夜遊び仲間のI氏は「たまには若いコと交流しないと心も体も老成化する一方」と窘めるのであった。
スレた夜の女よりもキラキラとした素人女子。それも未来への夢と希望に溢れた女子大生に若いエキスを分けてもらいたい。生娘の生き血を求める吸血鬼のように、夜の新境地を目指すのであった。
女子大生と触れ合い思春期の記憶が蘇る
青春回顧をテーマに訪れたのは銀座のキャンパスカフェ「BADD GIRLS 銀座店」。働くキャストは現役の女子学生のみ。指名、同伴といったキャバクラ的要素はなく、自然体の接客、トークが楽しめるお店だ。私服姿の女のコで賑やかな店内に入ると、文字通り大学のキャンパスに迷い込んだような錯覚を覚える。
「いらっしゃいませ~」
明るい笑顔と嬌声を振りまきながら席についたのは、えくぼがチャーミングな斉藤ゆきなちゃん(20歳)とセクシー担当の浜崎優ちゃん(20歳)。ともに今年4月から3年生という花の女子大生だ。「え~? 34歳なんて枯れる年じゃないですよ。だって、同年代の男のコより頼れるし教えてくれることいっぱいあるし。私よりキラキラしてますよ」(優)
「そうそう。同い年のコができないオトナの遊びやデートをしてみたいんですって」(ゆきな)
オトナの遊び? ほうほう、それでは……と、やおら空揚げを口にしてポッキーゲームをせがむスギナミに対し、「そういうのはダ~メ」とペチッとグーパンチで応酬のゆきなちゃん。「じゃあ私のほうからお返しに……安室奈美恵ゲーム、イェ~イ」と、「嚙まずに『アムロナミエ』を複数回言えないと罰ゲーム」の展開に。
コレだよ、コレッ! 脳裏に蘇る思春期の記憶と若草の香り。婚活中のアラサー女子とじゃ味わえない女子大生との楽しいひととき。
すっかり若さを注入され、笑顔もツヤツヤになったところで、お店をあとにすることにした。
「BADD GIRLS 銀座店」
東京都中央区銀座6-3-12 数寄屋ビルB2
電:03-3574-2030
休:日祝
営:16時半~ラスト
料:4410円(16時半~20時/70分)、1万710円(20時~ラスト/70分)
赤坂、六本木にも系列店アリ。「BADD GIRLS」に在籍する女のコたちをモデルにしたパズルゲーム「いまどき女子大生パネル」はANDROIDアプリで好評配信中。リアルな生写真、プロフィールを楽しめる