歌舞伎町の最深部 長屋の屋根裏で夜な夜な催される妖しいショーに潜入

 昔の歌舞伎町の雰囲気を最後まで残す「思い出の抜け道」。バラック屋台が並び、魑魅魍魎が跋扈する小道は、潜入記者時代何度も痛い目にあった場所だ。尻の奥がキュッとするのは気のせいか。O氏と2人、当時のタフエピソードを語っていると、小道が妙に明るいことに気づいた。薄暗くうねった道の真ん中に、複合飲食店施設「のれん街」ができており、古民家風の長屋は若者で賑わっている。

歌舞伎町の最深部に現れる「思い出の抜け道」。古いバラック屋台などが軒を連ねており、抜けるのには躊躇する道だ

 焼き鳥、牛タン、串カツ……肉食な街にふさわしく、煙と熱気でもうもうの店内。O氏と俺は焼き鳥屋の鶏皮焼きをビールで流し込もうとした刹那……“ドスン!ドスン!”と天井が軋む音が。他の客も酒を飲むのを止めて異音がするほうを見上げている。

(右下から時計回りに)美羽ママ、ちいママの優羽さん、石頭さとみさん、ライカさん。ちなみに全員がニューハーフというから驚きだ

「実はこの上、ショーパブなんですよ。僕らは慣れっこなんですが、ビックリしますよね(笑)」

 そう語る焼き鳥屋の店主。確かに2階からラウドな音楽とともにステップを踏むような音がする。

明るく威勢のいいお姉さまがお出迎え

 焼き鳥をかじりつつ、軋む階段を上るとド派手な店が。「ミックスショーパブ」と書かれている。

「いらっしゃい、座って座って!」

「安室ちゃんに影響された世界観を実現したい」と銀座の店から独立した美羽ママ(左)。カラフルなショーは女性客をも魅了する

 やけに声の野太いお姉さん(?)に腕を摑まれ、ソファへ。今まさにショーが始まろうとしていた。

一度見たら忘れられない魅惑のキャストとショー

女王蜂や、ヤバイTシャツ屋さんなどのジャパニーズロックからキンプリまで選曲がイカす。

 安室ちゃんの曲とともに始まったショーダンスはハード系。「ミックスショー」をうたう通り、ニューハーフ、おなべちゃん、ノンケの女性ダンサーが激しく踊る。長家の屋根裏。梁がむき出しで決して広くないステージだが、プロジェクションマッピングで演出されるなど幻想的。衣装を次々と替えてポップでクール、そしてセクシー。ダンサーのほとんどがニューハーフというのだから驚きだ。




「男も女も性をも超えたキャストがお客さんを目いっぱい楽しませる屋根裏ショーパブです」

 ショーの演出から衣装デザイン、振り付けまでほとんど一人でこなすという美羽ママが終演後、息を弾ませながら説明してくれた。

衣装も自作だそうで、バックのオリジナル映像とも相まって歌舞伎町流ファンタジーを魅せてくれる

「何が出るかわからない」とママが言う屋根裏の“フリークショー”は、映画『グレイテストショーマン』のよう。昨今デオドラントされつつある歌舞伎町の最深部は、怪しく、妖しいから楽しい。

【屋根裏Muchu】
住:新宿区歌舞伎町1-3-7 第1金嶋ビルB棟2階(歌舞伎町REDのれん街)
電:03-3202-1177
営:19時~ラスト
休:無休
料:7000円~(ショーチャージ込み・飲み放題)
●ショーは1日3回。開始時刻は要TEL

協力/O氏(夜遊びガイド) 撮影/渡辺秀之

苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
苫米地の他の記事